(21)封じられた策
ゴーレムは巨大な体をわずかに揺らし、動きを止めた。無機質なクリスタルの瞳が冷たく輝き、アルマをじっと見つめている。まるで周囲の状況を分析し、次の一手を計算しているようだった。その圧倒的な存在感が広場全体を支配し、張り詰めた緊張が二人を包み込む。
フィオラは荒い息をつきながら、その場に留まっていた。恐怖と緊張が心を締め付ける一方で、目の前に現れた金髪の女性の姿に、一筋の安堵が広がっていく。その黄金の髪が夜風に揺れ、碧眼がゴーレムをまっすぐ見据えるその姿に、フィオラの視線は釘付けになった。
「このあねさん…もしかして、アルマさんかいな?」
フィオラは呟きながらも、自然とリュックに手を伸ばしていた。バッグの中からポーションを取り出すと、素早く栓を抜き、目を覚ましかけているカーライルの口元へ押し当てる。
「ゴホッ…!」カーライルはむせつつも冷たい液体を喉に流し込まれ、体力がじわじわと戻っていくのを感じた。息が整い始めると共に、瞳にも少しずつ光が戻る。
だがフィオラは彼の容態に気を取られることなく、再びアルマに視線を向けた。その瞳には、目の前の女性に対する興味と、言葉にしきれない感謝が滲んでいた。
「ほんまに…助かったわ。あんた、アルマさんやんな?噂だけで聞いてたけど…いや、えらい頼もしいわ!」フィオラは笑みを浮かべつつ、興奮気味に言葉を続ける。
アルマは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかに答えた。「そ、そうよ。私がアルマ。それで…あなたは?」
フィオラは胸を張りながらにっこり笑う。「ウチはフィオラ!魔匠を継ぐもんや!訳あってこのあんちゃんと一緒に冒険してんねん。でも、こんなヤバいモンスターが出るなんて思わんかったわ!」
「そう…あなたは仲間なのね。」アルマは微かに口元を緩め、控えめな微笑みを浮かべた。その笑みは場の空気を和らげたが、一瞬のこと。彼女の碧眼は再びゴーレムに向けられ、次の戦いに備える決意が滲み出ていた。
ポーションを飲み干したカーライルは、ゆっくりと息を整える。疲労で鈍っていた体が少しずつ回復し、表情にはわずかな余裕が戻った。しかし、ゴーレムを見据えるその瞳には、先ほどまでの戦いの記憶が残り、緊張感が漂っている。
「なあ、嬢ちゃん。」カーライルがアルマに声をかけた。その声には緊張感の中に、何か新しい突破口を見出そうとする期待が混じっていた。「監査官に使ったあの技――"魔力昇華"ってやつ、ここでも使えないのか?」
フィオラが興味深そうに「魔力昇華…?」と小声でつぶやき、アルマとカーライルのやり取りを見守る。アルマは眉を寄せ、一瞬考え込むようにして答えた。
「確かに強力な術よ。でも…ここでは使えない。それどころか、使うのは危険すぎる。」
「危険?」カーライルが眉をひそめ、アルマを探るように見つめる。
「"マジックシフト"は対極の属性を持つマナを衝突させて、奔流を攻撃の力に変える術。でも、このゴーレムは…魔法を反射する特性を持っているみたいなの。もしその術を使えば、その力がそのまま私たちに跳ね返る可能性があるわ。」
「跳ね返されるってことか。」カーライルは腕を組み、顎に手を当てながらその言葉を噛みしめた。「つまり、力押しは通じないってわけだな。」
「そう。むしろ無謀な攻撃は命取りになる。」アルマの声には、ゴーレムの力を理解した上での慎重さがあった。
そのやり取りを聞いていたフィオラが明るい声で割り込む。「それやったらウチの出番やな!素材をうまいこと組み合わせたら、ゴーレム対策の一発を作れるかもしれん!」
アルマはその言葉に軽く頷きつつも、再び鋭い眼差しでゴーレムを観察する。その姿は、場を掌握しようとする指揮官のようだった。一方のフィオラもまた、リュックの中を探りながら戦略を練っていた。その様子は普段の軽妙さを一切感じさせず、目の前の難敵に立ち向かおうとする強い意志を示している。
三人はそれぞれの役割を意識しながら、共通の目標に向けて動き始めた。答えはまだ見つからないが、ゴーレムという脅威を打破するという決意だけは揺るぎなかった。
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