(18)無慈悲な巨体
フィオラは興奮を隠せず声を弾ませた。「まずはウチが隙を作ったる!準備はええか?」挑戦者のような輝きがその目に宿り、戦闘の緊張感さえ楽しんでいるようだった。
カーライルは微かに笑みを浮かべ、軽く頷いて応じた。
二人は呼吸を合わせるように動き出し、巨大なクリスタルゴーレムに突進する。カーライルは双剣を抜き、間合いを一気に詰めた。広間の光を反射するクリスタルの体は圧倒的な存在感を放っていたが、彼は怯むことなく正面から立ち向かった。
ゴーレムが一歩踏み出すたびに大地が揺れ、その巨大な足音が空間全体を震わせる。カーライルは振り下ろされた巨腕を素早く回避し、双剣で鋭く斬りつけた。しかし――。
「ガキィン!」
鋼鉄のように硬いクリスタルの体が剣を弾き返す。傷一つつかないその防御力に、カーライルは苦笑しながら構えを整え直した。「やっぱり、そう簡単にはいかないか…」
その瞬間、フィオラがリュックから小さな爆弾を取り出し、笑顔を浮かべた。「とっておき、お見舞いしたるで!」そう言って軽快に爆弾を投げると、弾はゴーレムの胴体に一直線に飛んでいく。
「いっけえええええええ!」
爆発と閃光が広間を照らす。しかし――ゴーレムは傷一つ負わず、爆発の痕跡すら残さない。
「火蜥蜴の尻尾と魔岩石で作ったウチの特製爆弾が…通じへんやなんて!」驚愕するフィオラだったが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。「それじゃあ、次はこれや!」
素早くボルトウルフの角を取り出し、マテリアカノンに詰め込む。動作には迷いがなく、自信に満ちていた。「これならどうや!高濃度の雷のマナを含んだ素材やで!」
フィオラが引き金を引くと、青白い稲妻をまとったマナ弾が轟音を立てて発射され、ゴーレムに直撃する。しかし――。
「ガキィン!」という甲高い音とともに稲妻は弾かれ、虚しく消え去った。
フィオラは驚きの表情を浮かべ、小さく呟く。「こいつ…!」その目にはゴーレムの圧倒的な防御力への驚きと苛立ちが浮かんでいた。しかし、彼女は冷静さを取り戻し、再びリュックに手を伸ばした。
「次は水や!」と元気に叫び、セイレーンの涙を取り出してカノンに装填する。淡い青い光を放つ水晶から生み出された水の槍は鋭く成形され、猛スピードでゴーレムに向かって飛び込む。
だが、「ガキィン!」という音とともに水の槍は砕け散る。
「なんやて…?」驚愕するフィオラは一瞬呆然としたが、すぐに素材を探し始める。「なら炎や!」火竜の鱗を取り出し、発射準備を整える。
燃え上がる炎をまとったマナ弾が広間を灼熱の世界に変える。しかし、ゴーレムはその炎さえも無効化し、無傷のまま立ち続けていた。
「嘘やろ…ほな、風や!」フィオラはストームイーグルの羽根を取り出し、鋭い風の刃を生み出す。だが、それもまたゴーレムに弾かれて消え去る。
「これでもあかんのかいな…!」フィオラは悔しそうに呟き、「もう、こんなん、ウチの素材の無駄やん!」と嘆きの声を上げた。
その間、カーライルは冷静にゴーレムを見据え、ふと記憶の中の冒険者たちの言葉を思い出す。
薄暗いランプの灯りの下、傷だらけの冒険者たちが疲れた様子でグラスを傾けながら、重い口調で語り合っていた。
「クリスタルの体を持つミラーゴーレムってやつは、ほんと厄介でな…」一人が眉をひそめながら語り出す。その声には戦いで受けた苦痛と無力感がにじんでいた。
「魔法がまったく通じねぇ。どんなに強力な魔法でも反射されるんだよ。あれに一度でも挑んだ奴ならわかる、この絶望感がな…」
別の冒険者が苦々しげにグラスを置き、言葉を継いだ。「剣で斬りつけても無駄だ。あいつの体は鋼鉄以上に硬い。どんなに力を込めても、こっちの剣が先に砕けちまう。俺の愛剣も、それでおシャカだ…」
「魔法もダメ、剣もダメ。俺たちにできるのは逃げることだけだった。」その場にいた冒険者たちは全員黙り込み、ミラーゴーレムへの恐怖を共有しているかのようだった。
カーライルは、あの時の光景を思い出していた。冒険者たちの疲弊した表情、声に滲む恐れと無力感――その記憶が今でも鮮明に残っている。
「何も通じない、クリスタルの体か…」
カーライルは心の中で呟きながら、ゴーレムを睨みつけた。あの時の冒険者たちの声が頭の中で響いている。だが、彼はブランクがあれどもかつての冒険者だった。これまで幾度も困難を乗り越えてきた経験を総動員し、この圧倒的な敵を突破するための糸口を見つけるべく、思考を巡らせる。
「…どこかに必ず突破口がある。」
カーライルの瞳は冷静で鋭く、戦場の緊張感に飲み込まれることなく、次の一手を慎重に見据えていた。隣で素材のことを嘆くフィオラの声も遠のいていく中、彼の意識は完全に目の前のゴーレムへと向けられていた。
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