(13)王家御用達
カーライルのぶっきらぼうな自己紹介を聞いたフィオラは、にかっと笑って見せた。
「そっか、カーライルな!よろしく頼むわ!」その陽気な声と無邪気な笑顔には、冒険を楽しむ余裕と確かな自信が滲み出ており、彼女の人柄と強さを裏付けているかのようだった。
カーライルはその笑顔に少しだけ救われた気がし、思わず苦笑いを浮かべた。「まったく、命拾いしたよ。」その声には、軽い皮肉と安堵が入り混じっていた。
フィオラは誇らしげに胸を張りながら、得意げに言い放つ。「今のうちにウチと仲良うしといたら、ええことあるかもよ!なんたって、いずれは『魔匠』と呼ばれる存在になるんやさかいな!」
「魔匠…?」カーライルはその言葉に引っかかり、眉をひそめた。
フィオラは軽く頷き、勢いよく話し始めた。「そうや、魔匠ってのはな、王家から正式に認められた魔具師だけに与えられる称号なんや!王家御用達の魔具師として、その技術と実力を証明するもんやねん。実はな、ウチのじいちゃんがその称号を持ってたんやけど、ウチもいつか必ずその名を手に入れたる!」その目には、確固たる決意と夢を追う情熱が輝いていた。
カーライルは彼女の熱意に感心し、静かに頷いた。「なるほど…王家御用達の魔具師か。大した夢だな。」
「へへ、まあな!まだ修行中やけど、腕には自信あるで!」フィオラは胸を張って笑った。その笑顔には、単なる野心だけでなく、積み重ねてきた努力への自負が漂っていた。
突然、フィオラが顔を上げた。「それでな、あんちゃん、ちょっと提案があるんやけど!」彼女の突然の呼び名にカーライルは一瞬違和感を覚えたが、すぐに続きを促した。彼女の親しげな態度が不思議と心地よく感じられたからだ。
「今みたいに闇属性のモンスターには特に気ぃつけなあかんやろ?そこで提案や!」
フィオラはリュックをゴソゴソと漁り、小さな魔具を取り出して掲げた。
「これや、『幽霊探知《ゴーストアラート》』っちゅうねん!」フィオラは誇らしげに言い放った。「近くに闇属性のモンスターが近づいたら光って知らせてくれるんや。闇の魔石と光の魔石を組み合わせて作ったもんやで。これさえあれば、不意打ちの心配はあらへん!しかも銀貨一枚!こんな優れモン、他じゃ手に入らへんで!」
カーライルは彼女の勢いに圧倒されながらも、その有用性をすぐに理解した。まだ戦いの勘が戻っていない今、このような魔具の助けが必要になるだろうと感じた。
「まったく、命拾いした上に買い物までさせられるとはな。」カーライルは冗談めかして言いながらも、「分かった、もらおうか」と購入を決めた。
フィオラは勝ち誇ったように笑いながら、魔具を差し出した。
「商談成立やな! フィオラ様に感謝しぃや! これであんたも闇属性のモンスターに怯えんで済むで!」
カーライルは手渡された小さな魔具をしっかりと握りしめた。
冷たく硬い金属の感触が手のひらに伝わり、まるで非現実的な状況から現実に引き戻されるような感覚を覚えた。その頼もしい重さが、再び戦う決意を固めさせてくれる。同時に、酒場で冒険者たちが交わしていた会話がふと頭をよぎった。
「最近、ダンジョンにしつこい押し売り屋が出るんだよ。」
その時は笑い話の一部だと思っていた。だが今となっては、皮肉なことだ。目の前にはその「押し売り屋」と思われる人物がいて、それが俺の命を救っているのだから。思わず、苦笑いが漏れる。
「これが俺の運命ってやつか…」カーライルは銀貨を差し出し、礼として支払った。フィオラはその銀貨を軽やかに摘み取り、「へへっ、毎度あり!」と無造作にリュックへ放り込む。その手際の良さには熟練の商人のような余裕が感じられ、次の取引がすでに見えているかのようだった。
だが、もう一つの酒場の噂が、カーライルの耳の奥で蘇った。「まったく、使い物にならなかったんだよ。」
その言葉が頭をよぎった瞬間、何かがおかしいと感じた。目の前のゴーストスライムは確かにフィオラの魔具に捕縛されたはずだ。しかし――スライムの姿が見当たらない。消えた? いや、そんなはずはない。
「まさか…!」
ゴーストスライムが網をすり抜け、フィオラの背後に回り込んでいた。そして、今まさに彼女に襲いかかろうとしている。
「危ない!」カーライルは反射的に叫ぶと、体が勝手に動いていた。
双剣を抜き放ち、フィオラの背後に素早く跳び込む。ゴーストスライムが襲いかかろうと実体化した瞬間、その半透明の体をカーライルの剣が鋭く切り裂いた。
スライムはうごめきながら、黒い霧のように形を崩していく。その動きは断末魔のようで、やがて闇に溶け込み、完全に消滅した。カーライルは息を切らしながら双剣を鞘に納め、深く息を吐いた。
「危なかったな…」
フィオラは驚いた表情で振り返ると、自分の背後で消えたスライムの残骸を見て、気まずそうに肩をすくめた。「はは…まぁ、言うたやろ? ウチ、まだまだ修行中なんよ。ほんま助かったわ、あんちゃん!」
カーライルは苦笑いを浮かべた。「まぁ、何とかなったからいいさ。」
フィオラはすぐに明るい笑顔を取り戻し、目を輝かせながら言った。「でもさっきの剣さばき、ほんまにすごかったで! やっぱ、あんた只者やないな!」
その褒め言葉に、カーライルは少し照れくさそうに視線を外しながら、「まぁ、昔はな…」と淡々と答えた。その声には、かすかな誇らしさが混じっていた。
彼らのやり取りの中、再びダンジョンの空気が静寂に包まれる。だが、その静けさの裏には、まだこの先に潜む未知の脅威が隠されていることを、カーライルもフィオラも理解していた。
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