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愚痴聞きのカーライル ~女神に捧ぐ誓い~  作者: チョコレ
第四章 解き放たれし影
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(25)雷刃の葬送曲

 グリフォンは本能的に彼の殺気を察知し、巨大な翼を広げた。その動きに呼応するように凄まじい突風が巻き起こる。瓦礫が宙を舞い、遺跡全体が激しく揺れる中、グリフォンの瞳が鋭く光る。それは捕食者の冷徹な眼光――決して人間に屈することのない誇りがそこにあった。


 しかし、カーライルはその嵐をものともせず、雷光を纏った双剣を振りかざして突き進む。


「そんな風如きで、俺を止められると思うな!」


 叫びとともに、双剣が一閃。突風を切り裂きながら放たれた刃は、グリフォンの巨大な翼に深い傷を刻み込む。傷口から焼け焦げた煙が立ち昇り、グリフォンは痛みに満ちた咆哮を上げた。


 だが、カーライルの攻撃は止まらない。


 黒い雷を纏う双剣が、嵐の鳥の防御をことごとく打ち砕いていく。翼を裂き、羽を焼き払い、焦げた痕が次々と刻まれる。一撃ごとにグリフォンの防御が崩れていき、その威厳すら削ぎ取られるかのようだった。


 しかし、グリフォンもまた最後の抵抗を試みる。


 巨大な爪が嵐を裂くように振り下ろされる。

 それは猛禽としての誇りをかけた最後の一撃。


 だが――

 カーライルはその攻撃を冷笑と共に悠然とかわす。


 彼の動きには迷いも怯えもない。

 まるで嵐を制する孤高の戦士のように、踏み込む足取りは揺るぎない。


「これで終わりだ!」


 跳躍。双剣を交差させ、黒雷を纏った刃が振り下ろされる。


「雷月墜衝!」


 夜空を引き裂くような閃光が奔り、グリフォンを直撃。鋭い轟音が遺跡全体に響き渡り、その翼の片方が完全に吹き飛ばされた。バランスを失った巨体が地面へと崩れ落ちる。


 だが――カーライルの戦いは、まだ終わっていなかった。

 双剣を掲げ直し、再び黒雷を纏わせる。


「雷双月輪!」


 二つの雷の輪が宙を舞い、鋭い流星のようにグリフォンを包囲する。

 輪が交差し、融合する瞬間――


 轟音と爆発。


 空間が震え、瓦礫が巻き上がる。そのすべてをグリフォンは受け止めきれず、ついに完全に地に沈んだ。カーライルは冷たく呟く。


「ぬるいな…」


 その声には侮蔑と退屈が滲んでいた。双剣は再び閃光を放ち、カーライルは倒れたグリフォンへと無造作に歩み寄る。そして、片足を引き、全力の蹴りを放った。


 衝撃。

 グリフォンの巨体が宙に舞い、マナ抽出庫の巨大なガラス壁へと叩きつけられる。


 轟音。

 蜘蛛の巣状の亀裂がガラスに走り、そこから不気味な光が漏れ始める。


「砕けろ。」


 冷酷な声が空間を切り裂く。

 そして――もう一撃。


 全力で放たれた蹴りが、ガラスの亀裂を深く刻む。崩れゆくグリフォンの巨体は、マナの粒子へと還元され、宙を舞う光の残滓となる。その光景は儚くも美しく、同時に戦いの終焉を告げるものだった。


「この程度か…。」

 カーライルは一歩引き、冷ややかな目でガラスの亀裂を見上げる。その瞳には、さらなる破壊を待ち望むような狂気が宿っていた。


「…黒い雷の双剣…圧倒的な暴力…十年前と同じだ…。」

 遠くからその光景を見届けていたロクスは、低く呟く。胸に輝く銀の円環のペンダントを握りしめ、かつての記憶が頭をよぎる。共に戦い、失った彼女の面影が。


「カーライル、戻ってこい…!」

 ロクスの叫びも、虚しく轟音に掻き消される。カーライルの瞳には、もはや仲間への思いなどなかった。ただ、力への執着と、闘争心だけが燃え盛っていた。ロクスの剣を握る手がわずかに震えた。だが、それは恐怖ではなかった。覚悟だった。


「ゼフィアを止める。そして…カーライルも。」

 十年前にはできなかった。だが、今は違う。ロクスは静かに剣を構え、深く息を吸い込んだ。鼓動が戦場の轟音に溶けていく。


 迷いはない――二度と、同じ過ちは繰り返さない。

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@chocola_carlyle

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