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愚痴聞きのカーライル ~女神に捧ぐ誓い~  作者: チョコレ
第四章 解き放たれし影
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(15)遺跡の歓迎

 カーライルとロクスが遺跡の奥へ足を踏み入れると、空気が一変した。冷たい風が二人の肌を刺し、微かに漂う金属の匂いが不安を掻き立てる。壁面に刻まれた古代文字が青白い光を微かに放ち、その光が天井から滴り落ちる水滴を照らし、不規則な影を揺らしていた。この空間そのものが生き物のように脈動し、二人を警戒しているように感じられた。


「歓迎されてる感じじゃねえな。」

 カーライルは双剣を軽く構え直し、皮肉な笑みを浮かべた。その声には余裕が感じられるが、その瞳は獲物を狙う猛禽のように鋭く周囲を見張っている。


「ここは罠そのものだ。アルマ様をさらった者が仕掛けた可能性が高い。」

 ロクスが低く冷静に答える。その視線は壁面を這うように動き、刻まれた紋様の意味を探るように分析していた。


「罠だろうが何だろうが、突破するだけだ。」

 カーライルが肩をすくめたその時、地面が低い唸り声を上げたかと思うと、鋭い槍が突然床から突き出した。


「こりゃ派手な歓迎だな!」

 彼は即座に双剣を振るい、迫り来る槍を的確に弾き飛ばす。その動きには無駄がなく、かつてダンジョン攻略を生業としていた頃の熟練の技が光っていた。


「規則性があるはずだ。動きを見極める。」

 ロクスは床に刻まれた紋様を注意深く観察する。その視線は槍の発生位置と模様の発光に注がれ、瞬時に状況を分析していく。


「発光した場所が攻撃の源だ。」

 短く的確な指摘をロクスが告げると、カーライルは笑みを浮かべた。


「なるほど、分かりやすいな。つまり、その場所を踏まなきゃいい。」

 カーライルが軽口を叩きながら槍をいなしていく間、二人は巧みに息を合わせて進む。槍の攻撃を躱しながら奥へと進むその姿は、長年の戦闘経験が染み付いた二人の連携そのものだった。


 次の部屋に足を踏み入れた瞬間、空気が焼けるような熱気に変わる。壁面から突然炎が噴き出し、空間全体が赤く染まった。熱波が押し寄せ、瓦礫の端が炎に舐められて黒く焦げる。


「今度は火遊びかよ!」

 カーライルが舌打ちし、双剣を振るいながら炎の間を縫って進む。


「時間稼ぎだ。狙いは明らかだ。」

 ロクスは炎を冷静に躱しつつ、青白い視線で空間を見渡す。その瞳には無数の戦場を潜り抜けてきた者特有の冷静さと鋭さが宿っていた。


「急げってことだな。でも、これじゃ前に進むだけでも手間がかかる。」

 カーライルは炎の隙間を縫いながら呟く。


 ロクスがふと足を止め、目を閉じた。彼の体から微かなマナの気配が広がり、空間全体に流れるマナの波を探る。「…部屋の中心にある結晶が制御中枢だ。あれを破壊すれば、罠は無効化される。」


「了解!」

 カーライルは即座に応じ、炎の隙間を突き進む。だが、足元から鎖が突然現れ、彼の動きを封じようと絡みつく。


「くそっ!」

 カーライルが短く叫ぶと同時に、ロクスの剣が光の軌跡を描き、鎖を断ち切る。その動きには一切の迷いがなかった。


「行け!」

 ロクスの鋭い声が響くと、カーライルは再び走り出し、目標である青白い結晶体に飛びかかった。跳躍しながら振り下ろされた双剣が結晶体を正確に捉え、鋭い音と共に粉々に砕け散る。


 瞬間、炎が一斉に消え、部屋に静寂が訪れる。熱気は嘘のように消え失せ、代わりに冷たい空気が二人を包み込んだ。


「ふぅ……これで一息つけるな。」

 カーライルが肩で息をしながら振り返る。その額には汗が滲み、息が少し荒い。それでも、どこか満足げな笑みを浮かべていた。


「お前の援護がなきゃ無理だったな。」

 素直な言葉にロクスは静かに頷いた。


「まだ終わっていない。」

 ロクスの言葉には冷静な決意が込められていた。


 カーライルは双剣を握り直し、険しい表情を浮かべる。「さて、次はどんな仕掛けが待ってるんだか。楽しみだな。」


「油断するな。次はさらに厳しい試練が待っているだろう。」

 ロクスの言葉は短く、それでいて重みがあった。


 二人は揺らめく光に導かれるように階段を進む。闇の奥から、さらなる試練と戦いの気配が二人を待ち構えていた――それでも、彼らは迷いなくその一歩を踏み出した。

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@chocola_carlyle

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