(2)、負かしたい!
「あ、り、が、と、う」
君はそう言うとそっぽを向いたが、僕の方をチラチラと見てくる。
「どういたしまして」
彼女の行動が気になったが、彼女が無事そうだったのでひとまず安心した。
「貴方ー」
「あ、ちょっと待って」
(えーっと確かここに、あった)
「はい、これ」
さっき大声を出したからだろうか、彼女の掠れた声が辛そうだったから僕は持っていた飴を差し出す。
すると彼女は恥ずかしそうな顔をしてその飴を受け取った。
(飴で治ればいいけど)
そんなことを考えていたら、彼女は唐突にかけっこしましょと言ってきた。
しかし、彼女の服装は明らかに走れるようなものでは無い。僕はその姿でかけっこをすると転んでしまうのではないかと心配になった。
「それじゃあ、いくわよ!よーいドン」
僕の心配も虚しく彼女は走り出してしまった。
そして、勝負と言ってもドレスを着た彼女相手に本気を出す気にはなれなかった。
(程よく手をぬこう)
そう思い走り始めたら
彼女が思いっきり転んだ。
全く、言わんこっちゃない。
そう思いながら少し泣きべそをかいている君の体をおこした。
(僕は彼女に言う事を聞いて欲しい訳じゃないし彼女の方がゴールに近いから彼女の勝ちと言うことにしてもらおう)
彼女の勝ちを伝えると、とても嬉しそうに笑って見せた。
そして約束通り僕が言う事を聞くことになったけど、
(何を言われるんだろう、、、。
僕ができることなら別にいいけど)
「、、、さいよ」
「ん?」
よく聞き取れなくて聞き返してしまう。
すると彼女は顔を赤らめて恥ずかしそうに
「友達になりなさいって言ってるのよ」と言った。
断る理由はないし、何より君が不安そうな顔をするから僕は了承することにした。
すると君はとても嬉しそうな顔をして僕に手を振って帰った。
僕は、また転ぶのではないか、と心配になりつつ、
彼女の嬉しそうな顔を思い出して君に会えて良かったと思った。