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シーブルー

 これから書くものは、作り話として読んでほしい。


 昨日、仕事終わりに鉛のように重い体を引きずって帰路についたとき、小学生ぐらいの男児が二人、自転車に股がって歩道を塞いでいた。


 どうやらスマホでゲームをしているらしく、楽しげな笑い声などを聞きながら横を通りぬけた。


 その先で信号に捕まった。しばらく赤信号が変わるのを待っていると、一陣の風のように少年達がやってきた。先ほどゲームをしていた子達だった。少年は俺の前で横断歩道を自転車でわたろうとハンドルを切った。


 瞬間、「え、」という声。ドン、と爆発したような音が聞こえ、少年一人の姿が目の前から消えた。


 横断歩道は赤だった。当然それは車側が青表示であることを示し、薄暗がりの皆が帰路につく時間、誰もがほんの少し急いでいて、他人への配慮がかけていた。


 前輪駆動の乗用車がタイヤを空回りさせてエンジンをふかしていた。

 タイヤが地面から浮いている。


 見たくないよ。その車のしたに何があるのか。


 まあ、居合わせたものの義務として覗き込むと、夏の晴れ渡った空みたいに青いペイントのマウンテンバイクが下になっていた。あの少年の乗っていたものだ。


 だが少年が見つからない。


 しばらく探して見つかったのは道路横の草原の中だった。

 一度、アスファルトの地面に落下した彼は、頭が壊れ、腕が変な方向に曲がり、まるで人形のようだった。はねられた衝撃で数メートルも飛んだのだった。


 探している間にも血は抜け、肌は真っ白で美しい。世に言う、死に化粧というやつだ。血が抜けているのである。


 脳みそを守っていたはずの頭蓋骨は粉砕され、内側から突き破って出てきていた。


 はぁ、とため息。色々めんどくさいことになったぞと思う。誰もが関わりたくなく、多くの人が車から一瞥するだけで足早に家へと急いでいた。


 仕方がないので救急に電話すると心臓マッサージをしてくださいと言われた。


「あの、説明した通り、頭蓋骨が破損し、脳みそが外に出ている状態です。少年に意識はなく眼球も出っぱなし、呼び掛けにも応答はありません。どう見ても即死です」


「マッサージしないか!」


 怒られたのは久しぶりだった。結構ショックである。俺のような人間にも心はあるのだ。別に見捨てようと提案しているのではなく、『助かる見込みがないから余計な手間はかけるべきではない』と言っているのであって、救急のお兄さんをバカにしたわけでも少年を殺そうと思ったわけでもない。


 心臓マッサージのやり方を懇切丁寧に教えられ、仕方なく、もう完全に生き返る見込みもない少年に心臓マッサージをすることとなった。


 パキパキと、まるでモナカに入ったチョコとバニラのアイスみたいな音をたてて肋骨が全部折れた頃、救急車がやって来た。


 救急隊員の顔は、まるで仮面みたいに表情がなかった。




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