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魔法使いと繋がる世界 ~三つ子の魂編~『2024年改訂版』  作者: shiori


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第七話「決意の先へ」1

 次の日、私は水原家への挨拶に向かう前に祖母、稗田黒江の墓がある霊園へと向かうことにした。


 この舞原市に稗田家の本邸があるわけではないが、祖母は生前からこの地に墓を作り、準備をしていた。それだけこの地が祖母にとって大切であるという確かな証だが、私はこの日までどうしてもこの舞原市にある祖母の墓を訪れる勇気が出なかった。それだけ祖母の死は私にとって大きく、簡単には整理の付かない問題だったのだ。


「それで、何でプリミエールまでひょっこり付いてきてるのよ」

「何でと申されても……、わてぃし的には当然のこととしか認識していないのですよ?」


 相変わらず癇に障るような変な日本語を使う……。そうは思っても外国生まれのプリミエールに対してそれを面と向かって言える勇気は私にはなくて、もう慣れた気分で時々軽く注意するに留めている。


「はぁ……、付いてこなくていいのに、本当にもう……」


 外見的にも性格的にも目立つプリミエールが隣にいてはゆっくり落ち着いて祖母に挨拶に行くことも出来ない。邪険に扱いたいわけではないが、相手にするのは面倒でならない。


「何を言ってるんです、せっかくこうして、ようやくお嬢様がご主人に会いに来る勇気が持てたのです、それに同行せずしてお世話係が勤まりますかっ!」


 昨日の一件もあり、ノーテンションでいる私に対して、プリミエールのハイテンションはとても疲れるとしか言えない。


「いやいや、そこまで頼んでないから……、騒がしくてあなたがいるとゆっくりできないじゃない……」


「そういうことなら、わてぃしは墓地に入ったら遠くから俯瞰しておりますので、お気になさらずに」


「普通に言ってるけど、それもかなり怖いからね?」


 遠くから覗き込むようにして隠れて見てくるプリミエールの姿を想像して恐怖した。

 こうしてプリミエールは帰ることなく、今日も一緒に付いてきている。一体いつ満足して稗田家本邸に帰ってくれるんだろう? と思ってしまうほどだ。


 昨日の一件をもう少し詳しく話すと、ホテルの予約を取ったのはプリミエールで、代わりに予約取ってくれるなら楽でいいかと軽い気持ちで私は考えていた。

 

 しかし、実際には隣の部屋も一緒に予約を取っていたようで、プリミエールはその隣の部屋で私が到着するのをじっと待っていたのだった。


 そういうわけで、私がホテルに到着してシャワーをするところを見計らってプリミエールはタンスの中に隠れていたらしい。理解できない意味不明な行動だ。


 つまりプリミエールがしっかりしていれば、あんな危険な目に遭わずに済んだ可能性が濃厚なのだが、プリミエールの方はそれを問い詰めてもとぼけた顔をしている。


「それで、調べは付いたの? あの男」

「それはもちろんですとも、あやうくお嬢様の貞操を脅かそうという輩です、それは入念に調べますとも!」

「いやいや……、貞操じゃなくて狙われたのは研究データとか命だから……」

「何を言いますっ! タオル一枚というお嬢様のあられもない姿を見られたのです、もしかしたら隠しカメラで盗撮されていたかもしれません……。

 盗撮は立派な犯罪です!! そんなことになれば一大事ですよ。本当のお宝写真ですよっ! 世のロリコンどものおかずにされてしまうなんて、許しがたい暴挙……、絶対殺す絶対殺す絶対殺す!!」


「あのー、帰ってきてくださ~い! あと、ロリコン呼ばわりはやめてくださーい!!」


 私は危険な妄想が頭の中を駆け巡るプリミエールをこっちの世界に呼び起こした。


「はっ! 失礼しました。なんでもないです」

「えっ? なんだか人をロリ呼ばわりしてた気がしたけど?」

「そんなこと滅相もないです、いつもお美しいお嬢様ですよ?」

「その発言も十分うざいのよ……」


 朝から何故こんな意味不明な話をしてるんだかと私は心底呆れ果てた。


 黙っていればプリミエールはかなりの美人で世も羨む金髪碧眼美少女なのに……、どうしてこうなってしまったのか、私としては残念で仕方がない。


「――――それで、早く説明してくれる? あの男のこと」


「分かりました。では調査報告をしますね。

 あの男は中国国籍のチャン・ソンウン、市内の繁華街に暮らす21歳の男性のようです。オックスフォード大にも在籍していて、それで相手方はお嬢様のことを知っているようですね。

 おそらく何者かに依頼を受けてお嬢様を狙っているようですが、また命を狙われるようなことになるやもしれません、用心するに越したことはないかと思います」


 迷惑なことだが私を憎んでいる、とすれば彼自身が目的を持っているとも考えられるが、そのことは今、置いておいていいだろう。


 とはいえ、凛翔学園に一年間通うことに決まっているというのに心底厄介な話だ。


 早急に制圧してしまいたいところだが、身を隠されてはなかなか捕まえるのも困難だろう。こうした人間は一人とは限らない……、仲間を集めて組織的に動かれたら厄介だ。周囲にも悪影響を及ぼすかもしれない、慎重に事を運ぶ必要が出てきた。


「引き続き調査は続けて、敵は一人とは限らないんだから、バックにいる組織の情報も含めて集めておいてちょうだいね」

「はい、よしなに。今後とも、お嬢様の安全のために」


 舞原市での新しい暮らしに専念したい私は、今はプリミエールの言葉を信じるしかない。そう私は決めて、祖母の元へと急いだ。

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