紅い魔法使い
おひさです
ギルドから出た俺は、久しぶりに休暇を満喫しようとしていた。最近、慌ただしく修行やらクエストやらで落ち着く時間がなかったのである。
「おーい、あんちゃん。トラゴンの串焼きどうだい!」
そう明るく話しかけてくるのは串焼き屋の店主だ。いつも陽気で人当たりも良い彼の店は大繁盛している。
その中でも出張屋台の串焼きは少し味を変えてある限定品なのだ。
「3本!!」
「あいよ!!」
ちなみにトラゴンとはドラゴンの親戚のようなちっちゃい竜である。肉は柔らかく気性も穏やかなので、人間に家畜として買われている。
やっぱり美味しい。きっちりと歯ごたえがありつつも口に残るようなことも無く、噛めば噛むほど味が染み出してくるような肉串焼きは絶品だった。
トコトコと肉を頬張りつつ歩いていくと前方から朱色の髪の毛の魔法使いらしき人が歩いてきた。
「あ?何見てんだヨ餓鬼ィ…」
アッじっと見つめてたのがバレてしまった。いやまぁ、Sランク冒険者の「紅蓮魔導将」で有名な人がいたらそりゃ見ちゃうよね…。
Sランクになると各ギルドに報告がされて、その名前が英雄本と呼ばれる辞書のようなものに載る。俺はその本をくまなく読んでいるので知らないSランクはいないというわけだ。
「いえ、なんでもないです…」
「あ?なんでもないわけねぇだろあんなにジロジロ見やがって。私がSランクってこと知ってんだよなぁ?」
あ、Sランク。そういえば階はどれくらいなんだろう。ギルドからは機密事項と言われているので、2人にしか聞こえない程度の少量の声で聞く。
「あ、あの、階ってどれくらいなんですか…?」
そう聞くと彼女は怪訝な顔をしつつ、「お前どこでそれを…」などとヒソヒソと聞いてくる。最終的に「まさかこのチビがSランク…?」などと言っている。とりあえず立ち話もあれなのでそこらの店に入り、話をすることにした…というかする事になった。
・・・・・・
「んで、お前なんでアレのことを知ってる?」
「アレ…?」
「Sランクの階の事だよ。あれはSランクになった奴しか知りえない情報なはずだ。ギルドから漏れたとも考えにくいし…何者だ?」
感情に任せて話しているように見せかけて頭の中は冷静に物事を考えているようだ。やっぱりこういう人がSランクになるんだなぁ。
「ランクはAランク。階の事はレックスさんに…」
「レックス…?人違いか…」
あ、多分それ合ってます。そのレックスさんだと思います。
「まぁいい。ギルドの秘密なんかしったこっちゃ無いからな。とりあえずお前チビなのにAランクかぁ。やるなぁ?」
おいおい?と突っついてくる。さっきと打って変わって柔和な物腰に若干ビビっていると彼女の手に酒があるのを見つけた。もしかしてめっちゃお酒弱い?
「あ、ありがとうございます」
「お前何だ?見たところ軽装だし杖を持ってるあたり魔道士なんだろ?色は何だ?」
「青です」
「は?青…?」
驚きを隠せないと言った表情。そりゃ魔法の中で1番弱いとか使い物にならないと言われている魔法を使うそれも少年がAランクなんだ。なにがなんだかわからないといった思考に陥るのも無理はない。
「お前すげぇなぁ!」
否定的な言葉が飛んでくると思っていた俺は少し拍子抜けした顔でその言葉を受けた。ギルドの目が腐ってるだの運がいいだけだの言われる予定だったんだけど…。
「ん?何だ変な顔して。最弱の魔法で冒険者の目指す最高ランクにいるんだろ?その年齢で。天才というか怪物というか、お前すげぇよ。」
実力を見せてもない人にここまで褒められるのは初めてだ。少しウキウキしていると、彼女はとんでもないことを言い出した。
「お前の魔法見てみてぇな。ちょっとギルドの闘技場借りるべ?」
なんか見たことある光景ーーー!
これから頑張ります




