異世界を歩くもの001 ~ プロローグ ~
異世界に転生したと気づいたのはいつごろだろうか?
少なくとも物心ついたころには自然と新しい家族や環境を受け入れていた。
私の生まれた土地は農村でこの一帯で住んでいるほとんどの人間が農業に従事していた。
御多分に漏れず、私はとある農家の三男坊として生を受けた。
そしてここから自由気ままなスロー生活が……
ーーーー始まるわけがない。
私の生まれた時代は中世ヨーロッパあたりの文明レベルであり、私の知識が役に立つとは到底思えない。
俗にいう道具の扱いには長けているが、作り方はわからないといった感じだった。
私が前世で学んできた知識はこちらの世界では何の意味もなさなかったのだ。
そしてもう一つのスローライフができない理由が、『忙しい』ということだった。
農村では自分の腰の高さほどしかない子供すら忙しそうに働いていた。
この時代に重機という便利なものもなく、ほとんどが人力で農作業を行っていた。
例外で牛や馬などの農耕用の生き物はいるが、それらは村での共有財産で村のそばにある兵士の詰め所があり、部外者が近づくことすらできない。
この時代、牛や馬は人間なんかよりも価値が高いのかもしれない。
さて、そんな農村での生活だが実はあまり悪くはない。
というのも毎日十分すぎる量の食事ができるからである。
国の政策で農民たちを無理に搾取することを禁じられており、ほとんどの領では守られている。
一日に五食食べる猛者もいるくらい農民は優遇されているところがこの世界の数少ないいいところだろう。
なんでも食物は神々が人間を飢えないように与えたものであり、それらに奉仕するものを蔑ろにすることは許されないとのことであった。
さて、私の転生先の話はこれくらいにして私の話でもしようか……
不定期更新していきます。
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