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掌編

画期的○○○○

 一見SF風……微グロ? キモ? でもコメディ。ごくごく僅かですが、グロイ、キモイ表現がありますので、ご注意ください。(オチは、特定の方にしかピンとこないかもしれませんので、後書きにて補足させていただきます)

 この世界を作った神がいるとしたら、とんでもなく気まぐれで、残酷だ。

 そもそも、残酷だからこそ、俺たちという存在を産み出したのかもしれない。


「うちのシマでも、今日また……1人死んだぜ」

「ああ、こっちは2人だ」


 コロニーと呼ばれるこの世界は、それほど広くは無い。

 平らな大地が、ぼんやりと薄い光の差し込む天空に覆われているだけ。

 大地の端には天空へとそびえたつ高い壁があり、それ以上先に進むことはできない。


 この世界を憂う誰かがつけたコロニーの別名は「ゴミ捨て場」だ。

 しかし、希望を捨てたくない一部からは「保護区」とも呼ばれている。

 彼らの言うことには、天空の先には”天界”と呼ばれるエリアが広がっており、俺たちが生きていくことはできないほど荒廃しているという。


 はたして俺たちは、捨てられたのか、保護されているのか……。

 どちらの説が正しいのか、俺には分からない。

 ただ、コロニーでの生活が、俺たちにとって生優しいものではないということだけは良く知っている。


「おい、またシャトルが来たぜ!」


 誰かが叫ぶ声に、俺は天空を見上げた。


 常に薄曇りの空からは、不定期で”シャトル”と呼ばれる飛行物体がやってきては、赤ん坊を落としていく。

 生まれたばかりの赤ん坊は、とても弱く儚い存在だ。

 生き抜くには、誰かの手助けが必要だった。


 しかし、この狭いコロニーは、もう飽和状態なのだ。

 自分が生き延びるだけで精一杯なのに、ましてや他人の子どもを育てるような余裕なんてあるわけがない。

 シャトルの来訪は、過酷なサバイバルゲーム開始のサイレンだった。


 今回捨てられる赤ん坊の中からは、何人が生き延びられるのだろう。

 せめて、苦しまずに逝けたらいいけれど。


 もうずいぶん長くこの世界に生きる俺は、仲間の命が潰えることを哀れむ気持ちなど、とっくに麻痺していた。


  * * *


 その日、あまりの空腹に目が覚めた俺は、天空を見上げていた。

 うっすらと届く光の向こうに目を凝らす。


「それにしても、今回の干ばつはひどいな……」


 この世界の大地に、植物などは一切根付かない。

 俺たちがどうやって暮らしているかといえば”神の恵み”と呼ばれる奇跡にすがるだけだ。


 神の恵みとは、シャトルよりは頻繁に訪れる、神からの施しだ。

 俺たちが生きていくのにギリギリの栄養を含んだ食料が、定期的に天空から降ってくるのだ。


 神の施しが頻繁に起こる時期は良いのだが、今回のような施しが滞る……いわゆる”干ばつ”時期には、ひどい有様だった。

 希少な食料を、俺たちは奪い合うしかない。


 枯れた大地には、大人になれず干からびた仲間たちが、墓標を立てられることもなく転がっている。


 俺はといえば、このシマではかなり長生きしている方だろう。

 とはいえ、そろそろ栄養失調で死に至るのは、目に見えているのだが。



「神は、なぜこんなにも俺たちを苦しめるんだ……?」



 この世界で生き長らえてしまった俺は、幸福なのか、不幸なのか?


 涙を滲ませながら見上げた天空が、一瞬だけ色を変えた。

 祈りが、届いたのだろうか。


 唐突に、神の施しが始まった。


 もう、何日ぶりだろう。

 轟音と共に空から降ってくる食料を求めて、生き残った仲間たちが集まってくる。

 神の名を叫びながら、空へと手を伸ばす者。

 大地へ降った食料を、血走った目でガツガツとかきこむ者。


 俺も、その恵みを全身に浴びた。


 ……はずだった。


 少しだけ、タイミングが遅かったようだ。

 俺の体は、もうとっくに限界を超えていたのかもしれない。


「神よ……」


 呟いた言葉は、果たして声になっていただろうか。


 俺の体は、ひどく重い荷物のような音を立てながら、地に倒れ伏した。


  * * *


 死んだと思った俺は、フッと意識を取り戻した。

 妙に体が軽い。

 肉体から飛び出した魂が、天空を飛び越えて行くのが分かった。


 天空の向こうには、コロニーを凌駕するとてつもなく広い世界があった。


「ここが、伝説の場所……天界なのか……?」


 呟いた俺は、目前に迫る巨大な物体に凍りついた。


 それは、何度も恨みながらも憧れてやまなかった、神の姿だった。

 あまりにも偉大なその存在に、俺は涙を流していた。



「ンナァーオッ」



 神は施しを終えると咆哮を上げ、コロニーの上部から飛び去った。

 そのとき、天界の果てから、また別の神の声が響いてきた。



「ちょっと! あんたなんでミーちゃんのおトイレ掃除してくれなかったの!」

「俺も、一昨日からミー連れて実家帰ってたからさー」

「家空ける前に、おトイレ綺麗にしてってよ!」



『ほら、シートに○○わいちゃったじゃない!』



 「気持ち悪いっ!」と叫んだその荒ぶる神は、恐るべき力でコロニー全てを破壊し尽くした。


 新たに創造されるコロニーを見ながら、俺はただ小さく羽音を立てることしかできなかった。


 猫飼い、しかも一部の人にしか分からないオチでスミマセン。画期的猫トイレの話でした。

『花王 ニャンとも清潔トイレ』(http://www.kao.co.jp/nyantomo/products01/tokuchou.html)

 こんなニュータイプな猫トイレ、我が家では大活躍してます。1週間は下のおしっこシート変えないで済むのですが、その代わりに夏場とかうっかり汚れたまま放置すると、こんな恐ろしいことに……orz

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