第19話 炎杯《ヘレモス》
すみません。
元20部分を分割して読みやすくしただけです。
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「図書館を買い取ったの」
フィオナとサラ以外の3人が訝しんだ目をフィオナに向けたが、そんなものを気にしない様子でフィオナはジャックに聞いた。
「で、ジャックはどのくらい覚えてるの?」
「…………1つも」
ジャックがそう答えると、フィオナが大口を開けた。
下顎が地面に着きそうである。
「ちょっ、えっ!?」
「魔法を教えてもらったといっても、僕には一般的に言われている魔法の才能はなかったからね……」
言いながら、ジャックは情けなくなった。
「でも、呪文自体は10個くらい原文で覚えてるよ。……使ったことないけどね」
「やっぱり原文を覚えた方がいいのかな……」
ルイが沈んだ目をした。
「ちなみにルイは何の魔法が使えるの?」
ジャックが訊くと、
「ルイは何も使えないわよ」
フィオナが答えた。
余裕綽々、というか馬鹿にした声色だ。
「オックスフォード家っていえば、炎の魔法にかけては突出した家系なんだけどね。ルイは初歩の初歩、炎杯も使えない」
「ま、全く使えないことはないよ!!詠唱すると、オレンジ色の波が出てるだろ!?」
「まぁまぁ」
ジャックが近づいていく二人を宥めるように間に入った。
「ルイは魔法を使うとき、何を考えてるの?」
ジャックが訊くと、
「何か、手に魔力を溜める感じ、かな?」
「それだけじゃなくて、ちゃんと放出までしてる?」
「放出?」
「フィオナ、アイリス、この薪使っていい?」
ジャックは二人の了解を得ると、ルイの後ろに回った。
背中越しに、ルイの手を取る。
「お、おい……っ」
ルイが顔を赤らめた。
怒りと恥ずかしさが混じったような顔だった。
ジャックはお構いなしに、その手を薪にかざすようにした。
「いつも通りに魔力を右手に溜めて」
「……っ」
動揺を隠せない様子のルイだったが、ついには折れて魔力を溜めた。
「呪文を唱えて」
ルイは目を瞑った。
そうしないと、ルイはまだ魔力をコントロールできないらしい。
「炎杯!!」
オレンジ色の霧が広がった。
魔術の波だ。
「魔力が球形にするようにイメージして」
「……」
霧が球形に凝縮していく。やがて、ピンポン球くらいの大きさになった。
「……そのまま……右手から押し出すように……」
ジャックの言うままにすると、ルイの右手からゆっくりと、炎の子どもみたいな小さな火が出た。
そのままゆらゆらと、風に揺蕩うようにして、薪のもとへとたどり着く。
ボッ。
薪に着いた火は、やがて薪全体に広がっていった。
「や、やった!!」
「1段階省略してたからうまくいかなかったんだね」
満面の笑みで、ルイは喜びを表現した。
何のことか分かっていないだろうサラも一緒に大喜びし、アイリスは小さく手を叩いた。
一方フィオナはというと。
頬杖をして、面白くなさそうにルイを見ていた。




