第18話 基本魔術体系《グリモア》
腐人種の群れを追い払った後、しばらく進んで休憩になった。
思いのほか進みが遅い。
まだ半分も来ていないのに、日は正午をまたぐ頃だろうか。
疲れもあり、今は、廃城の砦だったらしい石造りの壁を日陰にして休憩中である。
アイリスとサラ、そしてフィオナは薪を取りに行っている。
どうやら、女主人にもらったパンを焼いて、葡萄ジャムをつけたいらしい。
ジャックが適当な石に腰掛けると、ルイが挙動不審にうろうろして、その後ジャックの隣に座った。
何やら難しい顔をしている。
ルイは意を決したように言った。
「あのさ、ジャック……。魔法教えてくれないか?」
「それはいいけど……、中等部ではどこまで習ってるの?」
「基本魔術までよ」
答えたのは薪集めから帰ってきたフィオナだった。
「中等部では戦闘魔術は習わないの。
せいぜい実用生活レベルまでね。『基本魔術体系』に出てくる30の魔法の内、10使えれば卒業要件は満たすのよ」
バラバラっと薪を地面に置きながら言った。
後ろからアイリスとサラもやってきて、サラはやや太い枝を剣のように掲げてジャックの真似事をしていた。
「『基本魔術体系』、……なつかしいなぁ」
ジャックが古里を思い出すように言った。
すると、ルイが丸い目をジャックに向けた。
「ジャック、知ってるの?」
「僕も最初はそれ使って練習したんだよ」
「そうなんですか?」
フィオナの後ろから来たアイリスが、少し驚いた顔をした。
「ジャック、あんたどこまで覚えたの?ちなみに私は20の魔法を覚えたわ。もちろん呪文は原文でね!!」
フィオナが対抗心を燃やした目をジャックに向けた。
「原文!?」とルイが声を上げた。
「原文って……1つの魔法あたり2000文はあるんだぞ?そもそも原文なんて『基本魔術体系』に載ってたか?」
「いえ……載ってない上に全国の図書館で閲覧禁止になっているはずですけど……」
アイリスが疑問と驚きが混じった声でフィオナに言った。
「ええ。だから図書館を買い取ったの」
「……」
図書館って、買えるんだ……。




