第17話 長腐人種≪ボブゴブリン≫
翌朝早朝。農家の朝はとても早い。
まだ鶏も起きていない時間に寝室の扉が開けられ、女主人が、「朝食よ」と起こしに来た。
一夜に二度も起こされたジャックとしては眠くて仕方なかった。
布団にくるまって抵抗していると、
「ジャック、さっさと起きなさい!!」
フィオナがそれを剥いだ。強盗の手つきだった。
「誰のせいだと思っているんだよ」、そう思い、口を開きかけて、わざわざ爆弾に火をつけるような真似はするまいと押し止めた。
ジャックは重い体を引きずるようにして、体をリビングまで持って行った。
「も、もう入らない……」
「すみません。私も……」
「何だい、都会のもんは食が細いねぇ」
朝から宴会並みのを食事をして、女主人が葡萄園に行く時間とほぼ同時に、ジャックたちも出発した。
木製の台車には、大人の男性が一人でやっと抱えられるほどの酒樽が積まれている。
「時間的には余裕があるわ。
でも、道の険しさとかモンスターの危険度を考えると、決して油断はできない。
みんなっ、気を引き締めていくように!!」
女主人は、一頭しかいない牛を気前よく貸してくれた。
これで、ジャックたちは牛が引く台車を守ることに専念できるようになったのである。
『炎杯!!』
『氷狐!!』
再びルクシャワの森へ入ると、やはり往路がラッキーだったらしい。
街道沿いの廃墟(基礎や一階部分の壁しか残っていない)から、腐人種の群れが襲ってきた。
血色の出目金のような目で、錆びた剣を握っている。
アイリスとフィオナはそれぞれ呪文を唱え、魔法を放って応戦した。
放たれた炎や冷気はゴブリンを一発で倒すことはできなかったが、ダメージは確実に与えている。
一方ルイはというと、
「ヘレモスっ、ヘレモスっ」
言うと同時に手を前に掲げるが、橙色の波動が少し発生するだけで霧散した。
そうして、取りこぼして接近してきたゴブリンを、ジャックが魔衝撃で斬り付けた。
「凄いっ今のどうやったの!?」
ルイが目を輝かせた。
食いつくようにジャックに寄る。
「ちょ、何あれ!?」
「皆さん、長腐人種ですっ気をつけてっ!!」
ジャックはフィオナ達の声に、首だけ動かして肩越しにそれを捉えた。
ジャックより高い身の丈。
隆起した筋肉。
樽を鷲づかみできるほどの大きな手には、これまた大きな石斧が握られていた。
ジャックは、外套を握るルイの手をいったん放して、
「ごめん、後でね」
そう謝ると、
――――ダンッ!!
ルイが次に見た光景は。
アイリスとルイの間に魔力の残光らしい青白い帯を引きながら、一瞬でボブゴブリンの懐に移動し。
ザンッ!!
その巨躯を、正中線で両断したジャックの背中だった。




