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第14話 ルクシャワの森


 馬車を降りた。

 運賃はフィオナの口車でなんとかなった。

 あの口は恐ろしい。何でも正論のように聞こえてしまう。


「どうやらここから葡萄園まで結構あるみたい」

 フィオナが頭を左手で掻きながら言った。


「同じ島の中にはあるけど、ここからは馬車の定期便も2日置きにしか出てないわ。ここからは歩きね」


「どれくらいあるんだ?」


 ジャックが訊いた。


「直線距離で25キロってところかしら。実際はもっとあるわ。渓谷を抜けるからね」


「歩いて行くには難しいね……」


 特にサラの足には無理だろう。

かといって置いていくには危険である。


「ちなみに今日っていつなんだ?」

 ジャックが訊いた。

「それもさっき馬車の御者に訊いたわ。9月14日よ」


 納品依頼の期限まで、あと2日だとフィオナは爪を噛んだ。

 フィオナの顔は不安と恐怖の中間の表情をしていた。


「行って帰って、には充分すぎるわ……。荷物がなければね」


 納品依頼のワインの量は樽一個だとういう。

 どんだけ飲むんだ、とジャックが呆れて言うと、


「お客様が来られる場合は、何泊かされることを考えて余分に用意しておくものですよ」


 とアイリスが言って合点がいった。

 だとしても用意しすぎだと思うが……。

 つまり樽をフィオナは担いで険しい道を25キロ歩く。普通に考えてだろう。


「魔獣の森を通ったら早くいけるけどね。あー、終わった。私の人生終わったわ」


 とやさぐれ気味にフィオナが言った。

 三角座りで、灰色になっている。


「魔獣の森?」


 ジャックが訊いた。


「魔獣の森よ。知らないの?ここルクシャワ諸島の魔獣の森は有名よ。高等部1等生も手をこまねく魔獣がうじゃうじゃいるんだから」


 立ち入り禁止のその区域に入らなければ大丈夫なのでは?とジャックが言った。


「地図なしで?無理よ」


 魔獣の森は全容が把握されていない。

 一応、ブドウ農家がある地域へ抜けるルートは御者から奪い取った地図であることは分かっているのだが、ところどころ危険区域に入っていた。


 命からがら、抜けてきた人からの情報で記されたルートである。


 議論の結果。


「行くしかないか……」


 フィオナが選んだのは、危険だが短距離の、森の道だった。

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