表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

第12話 朱海種

 決行日。翌日のことである。


 集合場所は港だった。

 朱海に面したその港には、大勢の人が集まっている。


「あれ?これ全部クエスト参加者なの?」

 ジャックが訊くと、

「いや?全部グレンジャー商会の船員よ」

 とフィオナが答えた。


「それにしても生憎の天気ね」と海を睨み付けながら続ける。

 空は曇り空だった。

 どんよりとした雲が空に蟠っている。


 風はない。

 だから波が立たないのは良いが、海全体を隠さんばかりに(わだかま)る霧が晴れることもなかった。


「提督、船出せそう?」


 フィオナが背丈の大きい白色の服を着た男性に訊くと、「これくらいなら大丈夫です」と嗄れた声が帰ってきた。


 確かに大丈夫そうだ、とジャックは思った。

 なぜなら、港に着いた瞬間に目に飛び込んできた船は、嵐さえも乗り越えそうなほどの壮麗さを持っていたからである。


 全長は四〇メートルくらい。

 白塗りの船に、豪華な3階建ての船室。

 船の後部には、大きな車輪のようなものが両側につけられて、あれが推進力を生むのだろう。

 黒い2本の煙突がジャックを見下ろしていた。


 サラが船の下ではしゃいでいる。

 よく見ればアイリスもいるようだ。


「アイリスもいるんだ」


「ええ。ローゼンに事情を聞いたから。あんたたちは一緒にいた方が良いでしょ」


 おや?とジャックは思った。

 フィオナは意外と気を回せる人物らしい。


「それより……」とフィオナは腕時計を見た。


「クレア、遅いわね」


 出発時間は過ぎていた。

 といっても5分くらいだが、クレア以外はもう揃っているのである。

 噂をすると、クレアが到着した。


「すいませ~ん!!」と走ってきたクレアは、寝癖がついていて、フィオナにぺこぺこと謝る姿はまるで子供のようだった。


 ○ △ × □


「朱海種?」


 船が走り出して4時間半。

 ジャックは船内にあるラウンジで、アイリスとサラとトランプをしていた。

 今度は大富豪である。アイリスが異様な強さで全く都落ちしないこと30戦目。


 クレアが来て、クエストの概要を説明したいと言った。

 どうせなら、とクレアも大富豪に参加しながら説明することになった。

 すっかり寝癖は元に戻っている。


「はい。姿形がわからないので、私達はそう呼んでいます」

 クレアがサラに5でとばされながら言った。


「でも張り紙に『飛竜種』って書いてありませんでした?」

 ジャックが答える。

 なぜか、クレアという人物は年上のような気がしてついついジャックは敬語を使った。

 出したカードは8。場のカードが切られた。

 

「はい。おそらく、と書くのが適当なのですが十中八九、飛竜種です。何しろ空か襲ってくる生き物で、船団を壊滅させるほどの破壊力を持つのは飛竜種くらいですから」


 なるほど、とジャックは相づちを打った。

 無難に4を出す。


「でも、このクエストの本来の目的は討伐ではないんです」


「え?」


「実は国王様が、1週間後にとある領主様を晩餐会に招待したんです。その領主様は向島のルクシャワ諸島で作られるワインを大変お気に召してまして、その納品が商会に命じられたんですよ」


「ワインの納品……。1週間後までにですか?」


「納品は今日から3日後まで、ですけどね」


 アイリスが8で上がって、つづくサラがまた5を出した。

 クレアの手札が一向に減っていない。


「…………それ、大丈夫なんですか?」


「やばいです。ジャックさん。フィオナさんにガツンと言ってください。何でも受諾してくるんですよあの人」


 半泣きである。

 傍目から見たら、大富豪で全然勝てない人みたいになっている。


 ジャックはクレアを不憫に思ったが、「ははは……」という乾いた笑いしか出なかった。


「僕はフィオナさんに一回だまされているからな」


 ジャックがスピードのエースで上がりながら言うと、どこからともなく大きい音が聞こえた。





「フィオナを馬鹿にするな!!」





 身長はジャックより小さく、フィオナと同じくらいだ。

 金髪の美少女、いや少年か?とにかくその子は、勇気を振り絞ったように必死の表情を浮かべていた。


 しかし、ジャックたちが聞いた大きな音とは彼女のことではなかった。


 次の瞬間、船が大きく揺れた。

 そして、忙しない足音が近づいてきた。。


「大変よ!!」


 戸口から飛び出したのはフィオナである。

 あわてた様子でまくし立てた。


朱海種(ヤツ)に船を壊された!!みんな急いで外に出て!!」


 ○ △ × □


 波の音が聞こえる。

 感触すらあった。冷たい水が、ジャックの足を一定の間隔で触っている。


 ジャックは痛む節々の痛みをこらえながら体を起こした。


 あたりを見ると砂浜だった。

 いつの間にか姿を現した太陽が砂浜をまぶしく照らしている。


「あーあ」


 フィオナの声がした。

 見ると、座り込んで、頬杖をつきながら海に視線をやっている。


「……フィオナ」


「……あら?気がついたの?」


 フィオナはやさぐれた口調で言った。


「どこだ……ここ」


「さぁ……。ここがどこか、今日がいつかも分からない」


 フィオナは自嘲気味に言った。


「納品を成功させずに、国王様に恥をかかせたら……どうなるんだろ……」


 そんなことは、明白だった。


次回登場人物

ジャック・アゼルバーン

アイリス・シュガーズ

サラ・シュガーズ

フィオナ・グレンジャー

クレア・オリアス


ルイ・オックスフォード

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ