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30話 少年と旅立ちと土だるま

 清水の落ちる重い音が体に響く谷底で、少年は二つに連なった土の塊を手にした。ここで土を手に入れることは容易くない。だがそれがいつどうやって作られたのか、彼は知っていた。

 少年がふと笑う。


「割とすぐに来たね。どこかで俺のこと監視でもしてたの?」


 唐突に背後に生じた気配も、二度目ともなると驚かない。振り返ると、先程まで誰もいなかったはずの岩壁の前に女が立っていた。水の流れる音に、地面を擦る砂利の音が混じる。女が素足なのに今やっと気付いた少年は、首を傾げた。記憶にある姿より一回り小さい気がする。


「何か縮んだ? それに貴女やっぱりどこかアヤと似てる。同じ所から来たからかな」

「ゲートの向こう側という意味であれば、そうかもしれないですね。──それより厄介な奴らに見つかる前に、すぐにでもここを立ちたい。質問なら後で聞く。決心はつきましたか?」


 珍しく──と言うほど彼女のことを知らないが──焦りを滲ませた口調で反応が返ってきたのに、軽く目を見張る。女は感情が表に出ると、一層若く見える。少女といってもいい年齢かもしれない。


「そうだね。俺も多分マークされてる。谷の外に出るなら早い方がいい」


 一つ頷くと、少年は真っ直ぐに少女の方を見た。


「色々聞きたいことはあるけど、後回しにする。まずは自己紹介かな。俺は蘇芳。ゲートに封じられたアヤを助けたい。そのためなら風の谷を捨て、ゲートを開く鍵だって探しに行く。貴女の名は?」

「私は──」


 若き少年の言葉は風に刻まれ、異界の少女の言霊に導かれる。その先行きは正か邪か。それは誰も知らない。今は未だ。

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