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1話 安閑な某日と始まりと土だるま

 うららかな陽射しに少しばかり冷たい風がぴゅうと吹くある日。とある街の端にある建物の一室で、調子外れな歌が響いていた。


「だぁるまさん♪ だぁるまさん♪ こっち向いて~。向かんと目玉をほじくるぞぉ」


 椅子の上に行儀悪く片膝を立てて座る青年が、ペンをくるくる回し節をとっては、何やら紙に書き込んでいる。

 机の上には丸い二つの土塊で作られた人形──いわゆる『土だるま』がいくつも並べられている。

 木製の机は何冊もの本や紙類が所狭しと重ねられており、その貴重な隙間に薄布を敷き、厳かに土色の立ち並ぶその光景は、異様でありながら不思議と雑多な周囲に溶け込んでいた。


「ふふふ~ん♪ 跳躍一.二メートル~。接合部の回転一六〇度~♪」


 機嫌の良さそうな青年が端にあった土だるまを一つ掴み、自らの頭横で無造作に手放した。宙で二つの塊に分かれたそれらは、床でぐしゃりと潰れる。並ぶ土だるまの一つがぴくりと揺れるが、青年は特に気に留めない。


「やっぱり課題は耐久度~♪ 粘土を混ぜても~支柱を入れても~」


 ぐしゃり。ぐしゃり。歌の合間に次から次へと床に土溜まりが作られていく。


「やっぱり君には敵わない~♪」


 最も離れた位置にあった……いや正確には歌の合間に徐々に離れていった土だるまを掴むと、青年は同様に床に落とした。しかしそれは二つに分かれることなく、くるりと半回転して床に降り立つ。そしてすぐさまもう一度弾むと、部屋の入口の方へぴょこなんぴょこなんと向かって行く。


「おーい待てって。外に行ったら即効廃棄処分だぞ」


 ぴたりと止まった土だるまを確認し、青年はペンで自らの頭をつついた。


「別に嫌がることを無理矢理やらせる気はないって。ご主人様の元にはちゃんと帰してやるから安心しろ。まだその時じゃないだけだ」


 床に棒立ちになった土塊の、上の塊だけが恐る恐るという様子で回転するのを見て、青年の目が輝きを増す。


「とりあえず時間はまだある。それまでは……そうだな────状況によって変化する駆動範囲とか行動パターンとか色々調査しよっかー♪ 大丈夫だいじょぶー。嫌なことなんて何もないない任せろ!

 って逃げるな転がるなー! あっ転がるってことは付着テストできるけどその前に表面削って──嘘うそ! ごめんなさいジョークです! やらないっ!! やらないから扉に体当たりしないてマジ逃げやめてホントごめんなさいぃぃっ!!!」

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