ヒトリムシ
銃を同時に構えた。和美ちゃんはただ、事の行く末を見守ることしかできなかった。
「「死ねええええええええええ!!!!!」」
両方の咆哮の後、小さな音、2発。
ズキン!血が勢いよく吹き出る。左胸がやられた!
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
「あはは、また、失敗しちゃった・・・・・・」
口から血がでて止まらない。
銃口の焦点がゆっくりと心臓の場所に移動した。
カナちゃんはゆっくりと歩き、しゃがみこんだ僕の前に立った。
そして右肩に手を掴み、銃口をつけ、僕にキスをした。
吐息が漏れるカナちゃん。
私はただ、侵入する舌を受け入れるだけだった。
「快感は死と隣り合っているもの。あなたもその快楽にもうすぐ溺れるの」
頬は赤く染まり、興奮気味なのだろう。
カナは口を離すと、耳打ちをした。
「あなたは、私の足を奪ったのよ」
そ、その記憶はやめて。もうこのことを思い出すのは嫌だ・・・・・・嫌だっ!
私は最期の力で「カナ」を反射的に突き飛ばした。銃を構える。
「あなたは撃ったわ。5歳の私を」
「パン、パン、ぱん、って」ヒィッ!
もうやめて!!!あああああ!!!!!!!!
払いのけるように銃を乱射してしまった!しかし、「カナ」は当たらない。
「あの時も満月だったわ」
「当時私は、リーダーの娘だったわ。その時は敵対する宗教団体があったわね」
「その団体がヒットマンを要請して、来たのはあなた。そうだったわ」
「今日みたいな満月の夜、外で星を見ていたわ。そして、あなたは、撃ったの」
ムクロと化した「カナ」。
彼女が偽りの生を取り戻したからには、私を殺めるのはしょうがないのかもしれないというあきらめの気持ちはあった。
人を殺めた人間に、何もいう権利は無い。
ただ、この罪を認めるしかなかった。
「私は、撃った」
怖い。動物的な恐ろしさを感じる。
背筋が凍る。食べられる。もう私はこの獰猛な少女のものになってしまうんだ。
涙がポツリ、ポツリ、ポツリ。
それは川となり、僕の頬を濡らした。
なぜ、なぜこうなってしまったんだ・・・・・・。
私たちはこんなことのためにここに引っ越してきたのか。
和美ちゃんを殺すだけの存在。ただの鉄砲玉の役割だけだった。
私じゃなくてもこの任務は成立できた。
なんだ、やっぱり私はここでも必要されていなかったんだ。
あ、
あ、今、今になって、ようやくわかった。
わかった。すべてが。この世界が。わかった。
私が必要とされていないことが、私が今生きて、そして死んでいく理由が。
そうなんだ。なんて馬鹿なシステムなんだろう。
この世界を作った神様はとんだバカなんだ。
だってそうじゃなければこんな結末を用意しないもの。
私は自嘲を抑えきれなかった。
涙と同時に笑いがこぼれる。
1990年、それは、今。
でも、社木では、1990年とは違う時を歩もうとしている。
それは着実な死への歩み。
村がヤマガエリを起こす。
最後のヤマガエリ。
それは自殺と同じなのかもしれない。
和美ちゃんは、彼女は神だった。
ロボットでもあり、神でもあり、友達でもあり、好きな人だった。
怪訝そうに銃口を構えるカナちゃん。
何かを察したかのように私の銃をひったくろうとした。
しかし、一瞬私のほうが早かったみたいだ。
「私の勝ちだああああああああああああ!!!!!!」
口を開け、銃を突っ込む。
スローモーションのように物事が動いている気がする。
へたり込む和美ちゃん、恨めしい顔で銃を取ろうとするカナちゃん。
和美ちゃんの顔が見えた。もうどんな表情をしているかはわからない。でも言いたかった。
「ごめんなさい」
引き金を引いた。
頭の中に鉄の塊が入り込む。
しびれを感じる。
足や手から、徐々に感覚がなくなっていくのを感じた。
私は、結局こんな人生だった。
人生・・・・・・、ってなんなんだろう。
それは誰かが決めることなのかもしれない。
私は結局、燃え盛る炎に集まるヒトリムシ。
和美ちゃんに寄りあつまっていただけの存在なのかもしれない。
この社木地区に、集まってきた存在。
そこにどんな未来があろうとも、そこに進むしかない存在。
つくられた運命に従うしかないヒトリムシ。
自ら死を選ぶ、哀れで儚いヒトリムシ。




