全てを知っている
カナは思っていたよりもすぐ近くにいた。まるで我々がどのように動いて、どのように「対処」するのかわかっているように。
彼女は地区の踏切の中にいた。僕を見るなり、手招きをしてきた。
僕はゆっくり、しかし一定のスピードで歩きながら銃を構えた。
彼女は何も持たず、ただ笑顔のまま、車いすに座っていた。
とても静かだった。
「お久しぶりね」
彼女が口を開いた。
「そうだね。二週間ぶりくらいかな」
僕は、何か仕掛けてくるのではないかと緊張しながらも、何か起こってしまわないように返事をした。
「あなた、どこまで知ったの?」
「全て」
「すべてなんて知られるわけないじゃない。まぁ、この事件の核心を知ることはできたのかもしれないわね。そうよ。私の周りの人がいろいろ仕掛けたの。自己啓発セミナーね」
「じゃあ、一緒にカレーを食べたときに話してくれたことは、嘘だったの?」
「嘘、ではないわ。だけど、ほぼ嘘。」彼女はククククク、とおなかを手に置いて笑った。
「クッ・・・・・・」銃を力強く握りしめた。
「ええそうよ。何もかもが嘘なの!アハハ!最初からあなたのことは大っ嫌いだったの!私は利用するためだけに近づいたの!あなたはただの利用された道具なの!!!アハハハハハ!!!」めったに電車の来ない踏切で、彼女は天に向かって叫ぶようにして笑った。
「勝手にありもしない気持ちを寄り添って一緒にいて楽しかったでしょうね。でもご愁傷様。私はそういう人間なの」
彼女はまた冷たい目に戻って、僕をギラリとみた。
「私はあなたのすべてを知っている!本当に好きな食べ物は?好きな動物は?あなたが寝るとき、どのような寝相か?玄関から出るときいつもどの足から靴を履くか?全部全部知っている!!!」
「だから、和美がどのように、どのような感情を抱いて、あなたを接していたのかもわかるの!」
「あなたは何も知らない。知ろうともしない。だからあなたはこんなことになっているの!すべてを逃げ出して、すべてを忘れて!だからあなたのことは大嫌いなの!だから今すぐに死んでほしい。これが私の願い。そのためにいまここにいるの」
「私も銃を持っているわ。何を勘違いしているのか知らないけれど」
「え?」
「馬鹿ね。だから、ここで死んでしまうのよ。」
車いすの内ポケットから銃を取り出し、彼女は撃った。
身体に銃がめり込む感覚を覚えたのち、痛みが波のようにやってきた。
「う・・・・・・、痛、い」
「死ね、死ね、死ね!!!」
「クソっ」
弾は込めてあるので、乱射し、その場から走って逃げた。
涙が止まらなかった。
なぜ、どうしてこんなことになってしまったのか。
つらい、でも怒りも湧いてきた。
彼女を確実に、絶対に殺さなければならない。




