不器用
「こんにちは」
「こんにちは!ようこそ、待っていたのよ~、ホント」
能田さんは村の中でおんぼろな小屋で暮らしていたみたい。
ミリタリー色が強い部屋だった。サバイバル色ともいえるかな?
「そうだったんですか」
「あら、摩耶ちゃんも一緒だったの?それはよかった」
「で、本題に入るわね」
「かなゑ家についてですね」と僕は挟み込むように言った。
「ええ。私は代々かなゑ家の執事として様々なことを行わさせてもらっていたわ。経理から子守りまで」
カセットコンロであぶられたやかんを斜めにし、お湯をフィルターに入れ、コーヒーを出す。
平和な時間だった。
「かなゑ家はね、悪くないの。ただ、少し不器用なだけだったのよ」
「社木村。そこは人口千人にも満たない寒村。
神社村と呼ばれるほど、神社に関わる人間が村の政治を執り行っていた。
榎本家はその一族で、その下にかなゑ家がいた」
「かなゑ家は財政面を管理していたけど、高度経済成長期にかなゑ家が立ち上げた企業、「鼎不動産」が成長し隣町にビルを立て、隣町に力を持ち始めた。隣町の会社が社の寮を鼎不動産を通じてここの社木村に立てるようになったりしてね。もちろん、それは特産品が少ない村の為だったりしたの。人口が増えて、税収が多くなれば村が活性化すると考えてね。
そして隣の町との合併話を持ちかけたの。お金がそれでより社木に流れると思ってのことだった。でもそれがいけなかった。それが原因で榎本家とかなゑ家の因縁の対立が復活、今に至ってしまったのよ」能田さんはもともとセリフを練っていたかのように話し出した。
「合併後祭りを執り行った。その時に事件が起こった」
「事件、ですか」僕は木の椅子に座りなおした。
「そう、事件。かなゑ家のご長男が死んでしまった」
「もともとかなゑ家の長女、悠里お嬢さまがその年のササゲミを執り行うはずでした。しかし、それはかないませんでした。榎本家がそれを許さなかったのです」
「許さない?なぜ?」窓に目をやると、黒々とした夜空が見えた。
「その昔、この村で隣の地区の会社員が殺害された事件がありました。
彼は少し普通の人と異なっていました。いわゆる産業スパイだったのです。きっかけはわかりません。しかしそれが判明し、リンチによって何者かによって殺害されました。警察はもちろん来て、私たちかなゑ家を調べ始めました。産業スパイだから、かなゑ家が怪しいと踏んだんでしょう。しかしそれは出てきませんでした。結局犯人はわからず、自殺とされ、うやむやになっていった。だけれど、榎本家はかなゑ家がその殺人を引き起こし、そして村を混乱に陥れた張本人だと思い始めてしまったのです」
「その一件から、かなゑ家は事実上村に関わることが許されませんでした。その反動で、かなゑ家は合併話をより力強く推し進めることになりました。表面上ではそこまで対立があらわになることはなかったのですが、しかしもう後戻りができないほど分断が進んでしまいました・・・・・・」
沸騰したやかんをとり、三杯目のコーヒーを飲む。
「あ、あなたたち夕飯まだだったかしら?」
「夕飯頂けるんですか?ありがとうございます!」緊張した表情をふっと緩め、和美ちゃんは返した。
「私以前料理も作っていたから、少し自信があるのよ。提供できるお相手ももういなくなってしまったし、久しぶりに腕が鳴るわね」
「あはは」




