遺書
「服は無いなぁ。分かった。カセットテープを買ってくるから、そのついでに、でも女ものの服を買うのは少し気が引けるな」
「では私が」
なぜ和美ちゃんが?聞いていたの?
「和美ちゃん・・・・・・」
「いいわ。行きましょう」
「私の方がまだ顔を覚えられていないから、私の方がまだいいでしょう?」
「そうだね。ごめんね。こんな目に遭わせちゃって」
「いいの。どうせ、こうなることは分かっていたし」
「私ね、つけてたの。麻耶ちゃんが何か手紙を読んでて、銃を持ってたのを見ちゃったの。
だから、それで何かするんだろうなって、そのあと麻耶ちゃんがなにか暗い顔してて。やっぱりそうだったんだ」
「ごめんね・・・・・・」
「この後どうするか考えましょう」
「榎本さんのお宅は、かくまってくれるかしら」
「村長さん。確かにいいかもしれない。かなゑ家について何か知っているかもしれないし、後で電話してみよう」
「今電話をしましょう。彼らに狙われている今、時間はもうないのよ」
原稿用紙を広げて向かい合った。
思い出す。引っ越してきた初日の事。
僕はコンビニで彼女と出会った。
彼女は僕に壁を作らず、話しかけてくれた。
すぐに彼女と仲良くなった。
そして彼女と仲良くなった時、そしてもう一人の転校生がやってきた。
その転校生は、僕たちにうまく取り入って、その転校生は僕らの仲を引き裂くように計画した。
そして仲だけでない大切な信頼すらも壊した。
そして社木の人たちを壊した。
社木の全てを、壊した。
原稿用紙に水滴が落ちてくしゃくしゃになるのを必死に腕でとめながら文字を書きなぐった。もう夜になっていて、南部さんはコーヒーを買ってきてくれた。
「お疲れ様。できそう?遺書」
「遺書、なかなか書けませんね。僕はいつ死んでも大丈夫だと思っていました。でも書くことでいろんなことを思い出してしまって、なんだか死にたくなくなってしまいました」
「それでいい。限界まで死なないほうが、彼女の為にもなる」南部さんは答えた。
「ところでまた僕の推理を話していいかい?」
「ええ、かまいませんけれど」
「旧人類はいた、のかもしれない。 僕は以前その組織のリーダーと話す機会があった。確かに聡明な人間だった。なぜ過激化するのかわからないくらいにね。
その時彼女を見たんだ。リーダーの娘を。確かに他の信者は平々凡々そうに見えた。だけれど、あの娘さんは違った。確かに何か能力を持ち合わせていた。なんというか、彼女は僕たちと違う世界が見えていた、という印象を強く持ったんだ。
それはトリック、その組織を神秘的なものに演出しようとしているのかもしれないけれどね。だからその娘がそういったということは、和美ちゃんは秘めたる能力を持っているのかもしれない。ロボットという話は嘘だと思うけれどね」
僕は胸をなでおろした。
「だけれど、普通ではない力を和美ちゃんは持っている。だから、こんなことになってしまっているんじゃないか?いいかい、これは僕南部の考えだ。あくまで仮説として考えていてほしい。彼女がササゲミを執り行ってから、ヤマガエリが発生していない。つまりそれは殺す人がそばにいないということかもしれない。
だけど、彼女は人ではないから、ヤマガエリが起きていないんじゃないか?
これだけ不思議なことが頻発している今、どんなことが起きても不思議ではないと思う」
言い返せない。確かに、この世界はあまりにもおかしいことが一気に起こっていた。
それも、あの奇祭が全部かかわっていた。
ならば、それを取り仕切る榎本家にもう一度聞いてみるのが一番いいのではないか?




