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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
63/73

南部さん

「先生の友人に会いに行こう!」

盗聴器が服にくっついていた!勢いよく外し、窓から投げ捨てた。

奴らはプロ。だからといって我々はここで死んではならない。


先生の友人は隣の地区の奥に入り、ビルの地下一階に住んでいた。

「南部」という曲がった表札。間違いない。

ただ、人は本当に住んでいるのだろうか。

ドアをどんどんとたたく。

「いるのは分かっています!助けてください!」

5分くらい経っただろうか。

表札の前でずっと立っていた。

ドアが開いた!

僕はすかさず手を入れて、この手紙と写真を中に入れた。


「ササゲミの正体、分かったんです!」

すると、ギギィ、と完全に開かれ、住民の全貌が分かった。

肥満体系の男性で、いかにもな研究者風貌をしている。

この人なら確かに知っていそうな安心感もあった。


「ささ、こっちへ、早く」

周りをきょろきょろしながら、男性は中に招き入れた。

博士の件もあったので、

中はとてもごちゃごちゃしていそうだという先入観があったが、そうでもなかった。

その代わりに、たくさんの棚が置かれ、文書がきれいに配置されていた。


「どうぞこのソファーに座って」

僕らは部屋の奥、壁際のソファーに通された。

ソファーに3人とも座った後には、ちょうどコーヒーが3つ分並べられていた。


男性は向かいのソファーにどっかと座り込み、眉間にしわを寄せた。


「ふうむ。これは大変なことになったぞ。

まさか壮の話を話半分に聞いていたからなあ。

こうも証拠が出てくるとなんといっていいのやら。

あれ?壮は?」


「手紙を、読んでください」

手紙を2枚渡した。

男性は読み進めていき、より眼鏡のレンズが光ったような気がした。


「ふぅ・・・。そうか。では今君たちも命を狙われている、と」

「はい。僕たちはここに頼ってやってきました。どうか、助けてください!」


「助ける、か。わかった。ここで好きなだけいるといい。

これ以上もてなしをしたいところだが、話が話だ。これ以上のことも聞かせてほしい」

「あ、すまない。申し遅れたが、私は南部公孝という」

「私は森和美です」

「僕は宮部麻耶」

「私は博士とよんでくれ」


そうしてササゲミのイザナギとイザナミの話、新人類と旧人類が存在して、

新人類、つまり我々は旧人類によって作られたものであること、

到底ファンタジーではないかという話をしてみせた。


一言一言メモに書き写していく南部さん。

最後に、僕がさっきまで旧人類にとらわれていたことを話し終えると、

もう彼のコーヒーは無くなって、自分の考えをまとめている最中だった。



「旧人類なんてのは嘘っぱちだ。自分たちが特別な存在であるかのように見せたいために自称している。あぁ、申し訳ないね。実は僕弁護士で、ここの自己啓発セミナー、「未来の扉」被害者の会の弁護人として運営していたものだから、内実は大体わかっているんだ。そして、壮はあの閉鎖性が高い自己啓発セミナーの教義、つまり教えがどのようになっているのかというのを調べていた時に出会ってね。ここの社木にたどり着いて、僕もその研究をしていたということなのさ」

「彼らにこの事実を世間に公表されるのをとても恐れている。自分たちがやってきたことが間違いだと気づいてしまうからだ」

「だからこそこれを潰したい。だから必死に社木の歴史の研究をしている先生を消したのかもしれん、ね」

「そんな…勝手ですよ!身勝手な連中なんですね!」


「そうだよ、身勝手な連中だ。過激化した理由も、会長がある組織に殺されたと言って、地下活動に専念し始めた事からなんだ」

「そんな組織があるはずないのに、何もないところから過激化するなんて、あまりにもおかしいカルトだよ」

「組織、とは?」

「秘密結社TERRAと称する組織、らしい。

彼ら「旧人類」は以前、原始共産主義的な活動を行っていて、彼らの言い分からすれば、TERRAは共産主義の拡大を止めるために、指導者的存在の会長を殺した・・・と。机上の空想ですな」

「なぜそこまで知ってるんですか?」

「あ、あぁ。内通者がいてくれたからね。そこまではつかめたんだ」

「いえ、なぜ、そのTERRAの事を知っているんですか?」

「なあに、どこかの三文雑誌でも読んだんだろう。それとも君は、TERRAはあるとでも?」


ここでいうのをためらおうかと思った。

南部氏が信用に足りうる人か、いまだ分からなかったから。

でもこの封筒と銃を見せなければ、僕らはこれ以上追われている存在がいるという事を伝えられない。

しかも中身を見せるのにはためらわれるし・・・・・・。

「南部さん。事情を、話します」

変わらない文面と、重い凶器。

TERRAが実在しているというとても残酷な証拠を、彼に突き付けた。


「君はこれを持っておくべきだ。来る日が来たら、これでけりをつけなくちゃいけない。森さんを、殺さなきゃいけない。それは君まで消されるのを止めるためだ」


「今の君は頼れる存在、組織が一人もいない。孤独は一番恐ろしい事だ」

「わかってます。和美ちゃんをこの手で殺す。それが手っ取り早くコトを終わらせる事。だけど嫌なんです!この地区に引っ越してきて、唯一、人生で唯一心が通じ合える存在を手に入れられたんです!ひどすぎます。こんなのってないです!!!」

涙声になりながら南部さんにつっかかる。南部さんには罪がないとわかっていながらも、やりきれない思いを彼が収めさせてくれるのをただ待っているしかなかった。

「ごめん。私はなにもしてあげられることはない。だけど、事実を書き留めていくことはできる。君の今までの生活を、遺書ってわけではないけれど、これをすべて書き留めてどこかへもっていこう。そうすればどこか」

「どこかってどこですか!」

叫びにもならない声で、肩を高めて反論した。

「警察、政府、マスコミ、なんだっていい。君が生きている証拠さえあれば、これを拾って拡散してくれるかもしれない。

そうだろう?万が一君が、そいつらに殺されることがあっても、誰かが見てくれる。このまま死んでしまうより、もっといいはずだよ」

涙を袖で拭いた。そういえばこの服もあの時から着替えてない。

「すいません、取り乱してしまいました。提案ありがとうございます。では、口述でいいですか?あと、もしよければ着替えの服もありますか?」


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