ちゃんとした「人間」
家は電気がついていて、帰るのを待ち構えているようだった。
「帰ってきたね」
「たっだいまー」和美ちゃんがドアを開けていた。
僕は郵便物を取ってくるか。
なんだこれは・・・。
なぜ「今日の夕刊」が入っていたままなんだ!
明かりがついていて、和美ちゃんの両親が中にいるはずなのに!
和美ちゃんが飛び出してきた。
ないていた。
ほら、やっぱり人間じゃないか。
ちゃんとした人間なんだ。
「麻耶ちゃん、麻耶ちゃんは生きてるよね・・・・。ううっ・・・」
「生きてる。和美ちゃんが死ぬまで、僕は死なない」
「ここから逃げよう。もう敵の存在にバレているんだ」
「敵?それはなに?」
「僕にも分かんない。だけど、絶対に意思を持っているんだ!」
「逃げたらまた追いつかれてしまうかもだよ!」
「その時はその時だ。諦めちゃダメなんだ。諦めなきゃ生きれるんだ!」
「生きなきゃならないんだ!僕のためにも、そして君のためにも!」
和美ちゃんが殺した可能性なんてことはあえて考えなかった。
和美ちゃんのお父さん、お母さん。
ありがとう。そして、さようなら。
そして、僕たちは逃げた。先行きの見えない「希望」という名の奇跡をつかみ取るために。
ハァハァ・・・。息遣いだけが生きている証拠になるとは。
どこに行くあてもなく、僕たちはひたすら走り続けていた。
公園、学校、さっき通った橋、目的地はわからない。
僕たちは逃げている。しかも正体不明の存在から。傍から見れば馬鹿らしい以外にないだろう。
着の身着のまま、このあとどうするか。
僕たちには案がなかった。
そうだ、警察に行こう。
警察に言えばなんとかなるかもしれない。
橋から交番までは1キロ。
走って行ける距離だ。
確かに俺は、あの5年前の事件は無駄足だった。
玉手地区での少女誘拐事件。
犯人は自称博士。犯人自らが自首してきた。
その少女は「和美」と呼ばれているらしい。元の名前か、現在つけられている名前なのかは不明だったが。
そして、彼女には明確な知能の遅れが存在した。
見かけは小学5年生だったのだが、知識、知能においては小学1年生くらい、つまり、長期的に誘拐、監禁されていたのだ。
それにより、自称博士は刑法225条によって、現行犯逮捕されることとなった。
しかし、状態は変わった。メディアに報道されていても、身元引受人や、親せきが一切現れないのだ。
被告は根果てたのか途中から何も発さなくなった。
最近はその初期の事件からだいぶ時間が経ち、この交番内でもあの事件を口にするものは減っていった。
石田、その男をただひとりを除いては。
この男は今日もまた、この地区の歴史の本に目を通していた。
いやーやっとこさログインできました。
すいません




