初めての人
ドシン!
「いっててて!」
尻餅をつく。相手のパンが散らばってしまった。
相手は必死にパンをかき集めている。
僕も必死にパンをかき集めている。僕も相手の向こうに落ちてしまったパンを拾うのを手伝う。
「す、すみません!」
少女の声がした。
振り向くと、そこには少女がいた。
僕より年上かな?でも若くて綺麗な人。
スレンダーで髪は僕とは対照的なさらっとした長髪。
唇は薄ピンク。生命の息吹を感じさせるような人だ。
「は、はあ。こちらこそすいません」
見とれてる場合じゃない。こちらからぶつかったんだし謝り返しておかなきゃ。
「あれ、あなたは麻耶さん?」
へ?なんで僕のことを知っているんだろう?
僕はこんな美しい人を知らない。
「だ、誰ですか?」
「あらら、ごめんなさい。実は、ここ社木に引っ越して来た人って、最近だと戦時中の疎開と私くらいだから、ものすっごく珍しいんだよ!」
「だからもう、住民の全員が知っていると言っても過言ではないの」
「ええ!?」
僕が知る前から知り合いになっていたとは。
しかも初対面の人から珍しい者扱いをされるなんて・・・・・・。
「まあ、続きは私の家でしましょう、ね?」
「は、はい」
手をむんずとつかまれる。
初めての場所で初めての感覚。
悪くはない、かな。