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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
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大丈夫だから

「さあ、寝ましょう」和美ちゃんは電気を消した。

電気を消すと、窓から今まで気が付かなかった星々が鮮明に、そして美しくきらめいていた。

「うう・・・先生、先生、せんせえ・・・」

和美ちゃんは毛布にくるまり、震えていた。

僕は何もすることができないのか・・・。

和美ちゃんのお父さんのあの穏やかな顔を思い出す。

そうだ、僕は和美ちゃんを守らなきゃならないんだ!

僕はくるまっている毛布ごと和美ちゃんに抱きつく。

今はこれしかできない。何も言えないんだ!

和美ちゃんは必死に抵抗をする。でも僕はやめなかった。


これが守る方法だとわかっていたから。

「大丈夫。大丈夫だから」

今時「大丈夫」ほど大丈夫じゃない言葉はないが、それでも和美ちゃんは安心したらしい。

抵抗は緩やかに収まり、もう安心したのだろう。そのまま寝息を立て始めた。

ほっと一息つき手元にあったカレンダーを見る。

今日で一週間目。時が経つのは早いなあ。

見ると明後日の土曜日にバツ印がある。

例の祭りの日か。結局「ササゲミ」の内容については聞かずじまいだったしどんな祭りなんだろう。

明後日が楽しみだ。


あの封筒を、今読むべきなんじゃないだろうか。

和美ちゃんが寝静まっている今なら。

僕は椅子に座り、机の上に封筒を置いた。


2枚の写真と2枚の手紙がばらまかれた。

「宮部さんへ」と「森さんへ」と2枚の手紙があった。


「宮部さんへ。今この手紙を読んでいるということは、私がもう2度と教卓に上ることができないということです」

「私はあなたにササゲミを研究していると話しましたが、

ついさっきササゲミについて真実が判明しました。

これによる命の危険があるかもしれません。そのため、この手紙を書きました。

ササゲミの原型は、渡来人ではなく、全く別のもともとの原住民、

つまり縄文時代にここで住んでいた人が編み出したまつりごとだったのです。

我々とは全く違う、新しい存在だったのです。

どうか、私の封筒の中に入っている写真をみてください」

机の上にばらまかれた写真を2枚、ひっくり返して写真の全貌を見た。

「嘘・・・。そんなことなんて」


秘密基地の裏側にある行き止まりをそれは映していた。

もう一つは壁画らしきもの。行き止まりの土壁をきれいにしたら、こんなものが出てきたのか。

「石板は見つかりませんでしたが、壁画を見つけました。

2つの人種がかき分けられているのがわかるでしょう。

三つの目が私が言っている旧人類なのです。

旧人類は必ず、います。いまも知られず、彼らは我々と同化しているのです。

どうか、この手紙とこのポラロイドをなくさないでください。

そうすれば、私がここまで生きた意味も必ずあると思います。

だから最期のお願いとして、私の友人にこの手紙と写真を渡してください。

「南部」という表札があります。

彼は隣の地区に生活しています。


裏側に住所を書き留めておきました。それを参考にしてください。

もしあなたの命が危なくなったら、この手紙を燃やしてください。

そうすれば彼らもおってくることはないでしょう。

あなたの命のほうが大切なのだから、私のことに命を振り回されないように、生きてください。

生きることが一番大事なのですから」

「そして、この手紙を読んだら、二枚目の森さんへの手紙を彼女に渡してください。

彼女への感謝の思いを書き留めました。ぜひ読ませてあげてください。それでは、さようなら」


先生が、消されてしまった。そのこと知ったばっかりに・・・。

そうこうしてはいけない。先生の友人にこれを渡さなくては。


僕は夢を見た。草原が広がって僕はぽつんと、一人で体操座りをしていた。

そこには誰もいなかった。でもとても暖かく、心地が良かった。


少し目がさえてしまったので外へ出た。

星空が近くに感じるくらい、とてもきれいで、吸い込まれそうだった。

さっき夢に見た情景が、そこにあった。

「どう?夜空。きれいでしょ」

暗闇の中で和美ちゃんが隣に寄り添っていたのに気が付いた。


「うん。引っ越してから空を見る余裕もなかったから。

だから、こうやってじっくり見るとこんなにもきれいだなんて知らなかった」

「日本一きれいな夜空だと思う」

「私はずっとこの空を見てるから、あまりよさはわからないけれど、

摩耶ちゃんが気に入ってくれるのなら、よかった」

静かに、ゆっくりと星が移り行くさまを眠くなるまでずっと眺めていた。

この時間だけは、この地区のすべての残酷な現実も遮断していた気がする。

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