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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
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「守る」ということ

ゾロゾロと人が出て行く。もう終わったのか。


結局何もできず、

その中に和美ちゃんの姿があった。


笑顔で下級生と話す和美ちゃん。僕も見習わなきゃなぁ。


今までは人見知りで友達は和美ちゃんとカナちゃんだけ。今度こそは人見知りを直さなきゃ!と思っていたけど・・・。


やっぱ無理っぽいな。


とりあえず「私を守って!」と言われたからには和美ちゃんを精一杯守らなければならない。


じゃあそうやって守ろうか。常に和美ちゃんを見守る?それじゃストーカーになってしまう。


そうか。連絡手段を途切れさせなければいいのか。


しかし、僕の家には電話が通ってないしなぁ・・。くそう。


僕の存在に気づいた和美ちゃんは僕を手招きした。


「簡単な事じゃない!私と一緒に暮らすのよ」ケラケラと笑いながら言う。


「大丈夫。お父さんとお母さんにも言って、了解してもらったわ」



嬉しいのか恥ずかしいのか頭の中がごっちゃになる。


一番最初に考えついて、一番最初にボツにした案を言われるとは思いもしなかった。


「でも、さすがに年頃の女の子と一緒だと、僕、僕」


「今は非常時だもの。あなただけでも心配だし、私だけでも心配でしょ。早く証拠を集めて警察に行きましょう」


腕をむんずと掴まれる。


でも、同じ部屋なら、あんなことやこんなこと、そんなことがぐひひひひ・・・


「顔が火照ってるわ。どうしたの?」


三叉路を回右に曲がってまっすぐすすむと和美ちゃんの家。



大きい犬の姿がない。


「あれ?アインシュタインは?」


「私がそれを聞きたいよ。アインシュタインも、先生が消える前に消えたの」


「どこかに迷子になっているか、それとも、先生のように、か」


「もうやめて!」



「うっ!ごめんなさい」心をえぐってしまった。こんな顔を見たことがない、反射的に拒絶するような顔。


「いいわ。それが事実かも知れないもの。警察に言っても、誰も相手にしなかったわ。


でも、確実に私の周りの存在が消えていってるの。ほんとうに死んでいるのかしらね」


「嘘・・・それじゃ、僕も」


「いずれはそうなるかも。でも今だったら、いいと思う」


「何が?」


「私との関係をいっさい断ち切るの。私と二度と合わないようにすれば、もう麻耶ちゃんが消える心配がないと思うわ」


「でも、それじゃもう二度と和美ちゃんと話せられないじゃない!」


「消えるか、別れるか。その二択しかないわ」


私を守って。その言葉が脳裏をよぎった。


そうだ。守らなきゃ。



「絶対に和美ちゃんは消えさせない。だから、僕は絶対に和美ちゃんから離れない」


「この世から消えちゃうんだよ、私と一緒にいたら」


あの和美ちゃんの笑顔が見れなきゃ、ここで生きていても仕方がない。


空虚な長い人生を送るよりも、中身のある短い人生のほうが僕にとってはお似合いだ。(?)



扉を開けると、玄関で和美ちゃんのお父さん、お母さんが出迎えてくれた。


なるほど、あの綺麗な髪はお母さんゆずりなのか。


「ようこそいらっしゃいました」


「よく来たな。君の荷物は入れてあるからな。ささ、中へ」


半ば強制的に家の中に入れられる。


部屋は想像(妄想?)のごとく和美ちゃんの部屋だった。


見事に前からここに住んでいるかのように僕の布団がひかれ、その上に荷物が置かれていた。


どうやって僕の家から持ち出してきたのだろうか。


しかしそんな疑問も、お母さんの唐突な要望でかき消されてしまった。



「来たついでに悪いんだけれど、お使い行ってくれないかしら」


『はーい』



材料を買いに行くため、和美ちゃんと一緒にいつものお店と呼ばれているスーパー、「トミダ屋」に寄った。


そこは地区のちょうど真ん中あたりに店を構えているらしく、コンビニ2つ分の大きさだという。


一般的なスーパーに比べれば小さい方だが、この人口の少ない地区では十分な品ぞろえなのだろう。


この地区では買い物に行くのならコンビニとトミダ屋だけというのだから、


需要も供給もすごいことになっているのだろう。


「フンフンフフーン」


店のオリジナルソングを鼻歌で歌いながら和美ちゃんはメモで書きこまれた食材を買いそろえていく。


「ふーむ。この品ぞろえはもしや、すき焼きかな?麻耶ちゃんが来たから少し奮発しちゃったかな?」


メモをちらちら見せながらニヤニヤと笑った。



僕は好きなものも突っ込んでいく。お金は自腹で出すからと、


一緒にショッピングカートに入れていった。


フルーツミックスジュースをどんどん投入する。


足りなくなったらいろいろと困るからね。


メモの品網もそろい、僕の買いたいものも買えたので、


レジに並んだ。レジで対応しているおばさんが和美ちゃんを見るなり、上機嫌で話しかけてきた。


「あら、和美ちゃんじゃない!あれ、見ない顔ね、新しいお友達?名前はなんていうの?」


「宮部麻耶です。よろしくおねがいします」



「あぁ、よろしくね!んじゃあ新しいお客さんをまた連れてきてくれたから、

40%引きにしといてあげようかしらね!」


そんな破格な・・・。



「いいんですか?そんなことをして、店長が」


「店長はあたしだから。見てみて。この名札。そしてこの写真」


白黒の写真だ。


「開店当時の写真をずーっと使い続けていて、新しいものに変えたいんだけれど、

なかなかこういう年代物は変えられないのよね?」


確かに名札には「店長」とでかでかと書かれている。


「この店はあたしと息子で切り盛りしてんのよ。だから毎日てんてこ舞いよ!」


「でもこうやって新しいお客さんが入ってくると、

この人を常連さんにするまで辞めないって思っちゃってなかなか店じまいもできないのよね!死ぬまで店長してるかも」


後ろが詰まってきたので感謝の言葉を店長にいって、店を出た二人。


店のネオンがなぜか暖かく見えた。


「どう、気に入ってくれた?」


「うん」



家から帰るともう準備は出来上がっていたようだ。


和美ちゃんが察していた通りのすき焼きだ。


和美ちゃんがやったあ!と喜びをあらわにしていた。


「おかえりなさい。和美と麻耶ちゃん」


『ただいま!』


「買ってきたメモとその買い物袋をちょうだい。ありがとう」


僕はフルーツジュースを抜き出し、机の上に置いた。コップ、コップっと。


もう机の上にコップが置かれていた。



家族か・・・。


僕にとって家族とは記号的なものだった。


幼くして母を亡くして、僕とお父さんだけの家族が当たり前になっていた。


お父さんは優しいとも、厳しいともつかない人だった。


僕に対して常に事務的に扱って、まるで他人行儀のような・・・。


なんとも家庭的なものとは縁が遠かった僕にとっては、机にコップが置かれている、


それだけでも強いカルチャーショックを覚えたのだ。


そうか、家族か。



「和美、好き嫌いはなしですよ。もちろん麻耶ちゃんもね」


「でも、でも玉ねぎだけは!お許しください!」


「ダメです」


「うわあああ!」頭をぐしゃぐしゃと掻く和美ちゃん。


普段の真面目な和美ちゃんとはまた違う和美ちゃんだ。


そんな姿を見せてくれるということは僕に対してそこまで緊張していないということだ。


嬉しいような、嬉しくないような。



あっという間にお皿には何もなくなり、食後のカップアイスを食べつつテレビを見ている時だった。


「それで、君は娘を守ってくれるのだね」


いつになく真剣な顔をして和美ちゃんのお父さんがそうポツリと言った。


もう事は知っているようだった。


「同い年の君のほうが、僕より信頼におけるだろうからと、和美に伝えたんだ」


「そうですか。というからには、何から守るのかという事も知っていますか?」


「すまん。そこまでは僕にも分からん。アインシュタインが消えた後に連絡が入ってね、急に村長からのお達しで和美から目を離してはいけない、もし何かあったら私に連絡するように、って言われたんだ」


「村長さんから、ですか」


「ああ。とにかく、和美を見守っていてくれ。彼女も、それを強く願っていたからね」


「はい。娘さんを僕が命にかえてでも守ります」



数秒の間があり、穏やかな顔に戻った。


やはり、一人娘は何にかえることもできないんだなぁ。


僕のお父さんもそれくらいの気持ちはあってもいいのに。ぶぅ。

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