月間アトランティス
「ダメだ!ダメだ!社木案件はタブーだといっただろ!自治会長直々に口外禁止とされているんだ。一度それで失敗したからな・・・」
「失敗、ですか」
新人記者の山城は聞いた。
雑誌をぽんと丸め、小突く編集者。
二人は、親子のような関係だった。
この二人が所属している部署が扱っている「月間アトランティス」は数年前のオカルトブーム時に創刊されたものだ。
あの大人気オカルト系雑誌にあやかってつけてみたはいいものの、
ネタとなるものがあまりにも素人目から見ても分かるようなこじつけで、一部の熱狂的なマニア、しかもオカルトをとりわけ好きではないような人以外手に取るようなものはいなかった。
まあ要するに、この雑誌を扱う部署は、体のいい厄介払いのための部署なのである。
頑固な編集者と、なんだか憎めない記者。結局この二人が雑誌のほぼすべての記事を作っていた。
その二人だからこそ、ある程度の部数を保っている。
彼らはハングリー精神がとても強いのかもしれない。
しかし、そんな彼らでも、タブーとなる存在はあったのだ・・・・・・。
「社木には血生臭い事件が多々起きている。物騒なところなんだよ。
そんときに無理やり取材しようとした記者がいたが、そいつも・・・」
「そいつも?」
「アレだよアレ」
編集者は顔の前で手を合わせた。
つばを飲み込む山城。
しかし、恐怖とともに、がぜん興味が沸いてきた。
社木地区には気をつけなければいけない、そう心に決めて、デスクへと戻っていった。
だが、同時に社木への地図を買おうとも決心した。
山城 雄、この男はどのようなことにも、好奇心がわく男であった。
たとえそれが命に係わる事件に携わることになる案件であっても。
以前も呪いの人形がわいてくる部屋に1週間泊まり、なおかつその部屋を今の住処にしている。
彼には自信があった。彼は一つの宗教を信じていたからかもしれない。
その宗教は雑誌を創刊して3年が経ったのち、向こうの方から声をかけてきた。
今は自己啓発セミナーの体で動いているが、のちに宗教として申請するとのことだった。
面白そうだったから彼は二つ返事で「入信」した。
本来であれば自分の財産をすべてセミナーに献上するが、雑誌にそのセミナーを取り扱ってくれるならということでその話はなしになった。
結局会合に参加はしていなかったが、たまに郵送で届く本を読んだりしていた。
日本人が神社に願掛けをするうに、彼も必要な時にそのセミナーを信じたりしていたのだ。
セミナーが解散してしまったと知ったのは、社木の案件を調べていた時だった。




