「殺される」
キーンコーンカーンコーン。
お昼ご飯のベルが鳴る。12時になっていた。
毎日このベルがテンションを上げてくれる存在だったけど、昨日の今日だと、ぜんぜんだ。
おなかもすいてないし。
いそいそと机をくっつけてみたのはいいけれど、なかなか開く気になれない。
和美ちゃんは、劇を終えてからも弁当を作ってきてくれている。
なんで?と聞いたら、「いつも昨晩の残りをお弁当に詰めているだけだからねー」
と、にこやかに返すけど、確実にそれはない。
今日も、昨晩の残りとは思えないハンバーグが僕へのお弁当の中にドドンと入っている。
カナちゃんも食べたそうにそれを見ている。
カナちゃんのお弁当にももちろんハンバーグ入ってはいるけれど、それとは違った温かみを発していた。
しょうがないなぁ、と先輩風をふかせながら、カナちゃんにお弁当を渡した。
それでもかなゑ家のお弁当事情はすごそうだ。
我先にとカナちゃんは手を合わせ、ハンバーグにかぶりついた。
むふふ、と頬を撫でる人は初めて見た。
「おいしすぎて、ハンバーグに殺されそうです」
カナちゃん、ブラックジョークが過ぎるよ!
ん?
「カナちゃん、もう一度、もう一度その言葉をお願い」
「おいしすぎて、ハンバーグに、殺されそう」
頭の中に電気が走った気がした。
そうだ。何か彼女は口にしていた。
「そう。あの時、橙子さんは何か口にしていた。今やっとわかった」
「でも、遅かった!遅かったんだ!」
勢いで机をたたいてしまうが、そんなことで自分自身への怒りなど収まるはずもない。
「殺される、彼女はそう言っていた」
「でもなぜ事前に殺される、そんなことを分かっていた」
「お昼の教室でそんな大声出しちゃだめだよ・・・」
「真相を僕たちの手でつかみ取らなきゃ!」
急いで人は道に出た。
「摩耶ちゃん。橙子さんは殺されるのを知ってたって?」
「うん」
「だったら、そんな小さくつぶやくだけじゃなくて、他にも助けを求めたってことはない?」
「うん。確かに。そう」
「他に助けを求めるのなら、一番身近な村長さんに何か伝えたはずですわ」
「村長さんは、橙子さんが殺されたときササゲミの何を知ってしまったんだ、って言ってたね」
「ササゲミで殺された?」
「ササゲミは殺すものではないですわ。ただのお祭りですもの」
「でも、伝承によれば消えてしまうとか・・・」
「和美ちゃん。それは伝承だよ。史実じゃない」
「・・・」
「カナちゃん、何か考えているの?」
カナちゃんは少し深呼吸して、少し微笑みながら、注意するような口調で僕たちに言った。
「こんなところで油を売っててはいけませんわ。
帰りましょ。今日は楽しい思い出として日を過ごさなければ。最近嫌なことが多いですから」
「また、私の方でも資料を集めたりしますから」
「ありがとう。カナちゃん」
葬式にはいかなかったけれど、橙子さんのお通夜はもう始まっているんだろうかな。
早く彼女が安心して成仏できるように、犯人を見つけ出さなきゃ。
絶対に祟りなんて存在しない。
あってはならない。




