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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
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山登り!

僕らの担任の先生が山好きというのもあって、


「1-1」では、月曜日を使って山に登りに行くのがちょくちょくあるらしい。


校長先生も兼ねてるだけあって、学校全体の取り組みのようだ。


まぁ「1-1」しかないんだし、必然的にそうなるのもしょうがないのか。


今日登る山は、学校の裏にある山で、正式名称は忘れてしまった。


いつも窓から見える山だというけれど、山ばかりのこの地区で、目的の山なんかわかるはずもない。


先生は金曜日の5時間目のあたりでわくわくしていたのか、山登りの準備として早々と切り上げてしまった。


あの先生は単独でロッキー山脈まで登ってきたという噂があると和美ちゃんが教えてくれた。


どんだけ山が好きなんだろう。



「はぁはぁ。この年の都会系女子にはちとキツイわぁ」裏山の中腹にまでたどりつく。


いつも眺めている限りではそんなに大きいとは思っていなかったが、ここまで大きいとは。


一方の和美ちゃんは平気な顔ですいすいと登っていく。その体力の良さには脱帽した。


中腹で休憩をとる。まだ中腹なのか。


木がたくさん、いつもは壁か何かだと思ってそこまで注視していなかった山だけど、


入ってみるとたくさんの木がこの山を作っていることがわかる。



「弁当はカナちゃんが作ってきてくれるって言ってたけど。カナちゃんはどこにいるの?」


「頂上だよ」


彼女が登れるはずがない。


「どうしてカナちゃんは頂上にいるんだい?」


「そりゃぁ自家用ヘリに乗ってきたんだもの。どんな高いところだって乗り降り平気なんだよ」


乗り降りの表現の仕方が妙に的を得ている気がする。


くっそぉ、ずるいぞカナちゃん!僕も乗りたかった。


みな無口になって登り続ける。中腹からはやはり小さな山といえど、それなりの勾配になり、気をつけていないと取り残されてしまう。


そこには一種の連帯感が生まれていた。


先が見えなくなる。つまり頂上までもう少し。やっと見えてきた!


頂上に着いたら自由行動だと先生は前もって言っていたため、我先に、と子供たちがかけ上がっていく。



広場になっている頂上でわらわらといる群衆の中で車いすに乗ったカナちゃんを見つけるのは難しかった。


「おーい!カナちゃーん!」


手を振って声をかける。もうカナちゃんは頂上で待っていた。


どうやらもう送迎用ヘリコプターは飛び去ってしまっていた。


カナちゃんがようやく見えた。僕たちの視線が分かるとニコッと笑い、


膝に置いてあった弁当に目をやった。



「弁当は私が作ってきましたの。さあ一緒に食べましょう」


重箱を5段ものせている。


さすがに3人分あると重量がきつかっただろう。


「いただきます」


とふたを開けると一番上の一段目はきれいなおかずが所狭しと、しかしその一つ一つがきれいに枠の中に納まっている。


やっぱりこういう几帳面な性格は家族に似たんだろうか。


二段目もおかず、三段目からはごはんが一段ずつ盛られていた。


「これおいしい!」


和美ちゃんが歓喜の悲鳴をあげた。



一つ一つが優しい甘さとおいしさが口の中で広がってゆく。


ご飯の量もちょうどよく、全ての箱がきれいさっぱりなくなっていった。


「ふぅ?、おいしかったぁ。カナちゃんは料理が得意なんだね!」


カナちゃんはてれわらいをした。


「全ておうちでならいましたの」


「えっ?家でそんなことを教えてもらっているの?」


いいなあというまなざしで和美ちゃんは聞き始めた。



「はい。お料理だけじゃなくて、それ以外のことも教えて頂いているわ」


「例えばテーブルマナーや裁縫や護身術なんかもレディーのたしなみとのことで学んでいますの」


「すごい!カナちゃんがいればすべての危機に対応できそう!」


ゴロンと横になってカナちゃんを見上げた。


車いすから見える笑顔はお金持ちとは関係なく純粋に女の子としてかわいらしかった。


とてもかわいらしさがある一方、その笑顔の奥には何か、


悲しそうな一辺ものぞかせているような気がしてならなかった。



山を降りるときは登るときよりも気をつけなければならない。


山というものは、降りる時のほうがよりけがをしやすいのだと先生はいう。


山登りは奥が深いなあ。


バリバリバリ、と耳をつんざく音が、近くから響いてきた。


子供たちがさした先には、大きなヘリコプターが空中を浮上しているところだった。


「あれが、カナちゃんの・・・・・・」


「そうみたいね」


凄いなあ、お金持ちの家は。

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