なぞの封筒
「これは?」
先週のことだった。
郵便受けに入っていた謎の封筒。
開け口には高級そうなロウソクのスタンプが押され、鳩の形にかたどられていた。
切手は海外からのモノみたいだ。表面には僕の家の住所と郵便番号、
送り主は筆記体の英語で・・・読めない。
封筒を開けると中には一枚、紙が収納されていた。
「お父さん、これは何?」
その紙には、『Z県田沼郡川本町社木地区』と記されていた。
もちろん僕はそんな住所も知るよしもなく、一度も家の中では話に出なかったワードだ。
「今後のお前の住所だ」
お父さんは一言それだけを呟き、
今日まで至ってしまった。
お父さんが家に帰っても何もそれ以上の発展が聞けなかったし、
これはしょうがないことだ。たぶん。
1週間という短い期間で引越しの用意ができるはずもないので、
お父さんに日に分けて物は送ってくれるように頼んでおいた。
「着いたぞ」
「んむぅ・・・」
お父さんに肩を揺さぶられる。
もう車は止まっていた。どうやら寝ていたようだ。
ドアを開け、砂利を踏む。排気ガスの臭いはもうなかった。
代わりに森の香りがする。もう目的地にはついたようだ。
太陽は随分下がっていた。
ナビを確認したときは、まだお昼を食べた直後だったような…。
しかし周りを見渡しても、家らしき物はなかった。
「家は、ないけど・・・?」
「家はここにある」
お父さんは僕が事前に準備していないのを理解しているようで、簡略な地図を用意してくれたらしい。
「じゃ、そういう事だ」
「わかった」
お父さんは車に乗り、もと来た道に戻ってしまった。