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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
26/73

あれ

橙子さんが驚いた顔で、


「アレ、って何かしらね」と素知らぬふりをして取り繕ったのには、すぐわかった。


「橙子さんはなにか隠し事でもしているのでしょうかね。お祭りのアレ、ですわ」


カナちゃんが畳み掛ける。


顔はほほ笑んでいたが、目は、笑っていなかった。


ますますうろたえる橙子さん。


「何もないなら仕方ありませんね。何もないのですから」


カナちゃんが肩を落とした。残念そうな顔をしている。


「カナちゃん。橙子さんに何を聞き出そうとしたの?」


「特に何も?」


いたずらっぽく微笑んだ後、またいつもの顔に戻った。


彼女のあの顔は、どこか引っかかるものがあった。


ううむ。カナちゃんと橙子さんにはなにか特別な関係があるのだろうか。


「そういえば一昨日にお客様から頂いたお菓子があったわね、よかったら食べて言ってちょうだいな」


橙子さんはパチン、と手を叩くとそそくさと部屋を出て行ってしまった。


「カナちゃん、榎本さんと仲が悪いの?」


「まあまあ、ですわね。悪かった時もありましたが、今はそんなに対立はしていないですわ」


「そうなんだ。昔は悪かったんだね」


「本当に昔の話ですわ・・・・・・」


橙子さんが戻ってきた。


「さあ。お茶菓子があったので、これをどうぞ」


お茶菓子をいただけるなんて、随分気前が良いお人だなあ・・・。


美味しい!しっとりとした和菓子の上質な甘み。お茶がすすむ!


まさにお茶のためのお菓子だ。


「それで、私に聞けることはもうないのかしら」


「ええ、ありがとうございました」


「こちらこそ久しぶりに話し相手ができてよかったわ」


「そうなんですか」


「もう最近はお祭りの件で忙しくてね、でも祭りが終わったら大きな暇ができるわ」


「ではまたお祭りの時に会いましょう」


「そうね、無事成功できるように、それだけは神頼みだわ」


「この日のためにササゲミの祭具も新調したの。本当にきれいだわ。今でも見せてあげたいくらい」


「あと、あなたの成功もね」


和美ちゃんに目線を向け、ウインクした。


「頑張ります。そこまで言われると緊張しちゃうなー、えへへ」


「今日はありがとうございました。みんな、さあ、行こう」



先生が話をまとめ、僕らに席を立たせようとしたとき、橙子さんが何かを言っていたような気がする。


しかし、今となっても、よくわからない。彼女なりのSOSだったのだろうか。



先生ともおさらばし、メモの要点をまとめた。


閉鎖された村に出来たトンネル。それを元村長が手伝って、村政が始まってから、


村長はこの榎本家がずっとやってきたと。そしてこの証人が榎本橙子さん。よし。


明日は歴史資料館にいかなければ。

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