帰宅道
今日は夕暮れ時で、仕度をする前に部活開始宣言?をしてしまったので、そのまま帰ることになった。
「じゃあねー」
「じゃあね」
「さようなら」
カナちゃんとかえろう。いろいろ聞ければ親密度が増える、はず。
「カナちゃん。一緒に帰ってもいい?」
「ええ。構いませんわ。一緒に帰りましょう」
きゅるきゅると方向を変えて僕のそばに来た。
「さあ、帰りましょう」
「う、うん」
カナちゃんの車いすは電動で、くいっと前に倒すとゆっくりと前に進む。
彼女の姿を初めて見てから数日のあいだコントローラーを常に肌身はなさず持つ姿に、なぜか僕は負い目を感じてしまった。
舗装されていない砂利道、車の通りなんてあるわけもなく、とても静か。
下水のチョロロロという水が流れている音のみが僕らの帰路の環境音だった。
道路をてくてくと歩いていると、それとなく後ろから視線を感じる。
「後ろに護衛がいますの。さっき私が電話してつけてもらったの。
護衛もおらず一人で帰るのはダメ、との言いつけを守るためにね。ごめんなさいね」
「護衛が付くほどのお金持ちなんて、両親はどんなお仕事をされているの?」
「隣の市で大手不動産業を営んでいますわ。鼎不動産、とか耳にしたことはあるでしょう?」
「うん!あの猫のCMの?知ってるよ!まさかあの鼎不動産?全国展開している会社の令嬢とお話になれるなんて・・・・・・」
カナちゃんは苦笑し、
「まあ、そうね。でもそういわれるの、私好きじゃないの、ごめんなさいね」
と返事をした。
「うん」僕はあいまいな返事しかできなかった。
「ってことは両親は・・・、おうちにいるの?」
「母は家に。家は不動産の事務所と一体しているので、一応」
「なるほど」
「さっきは声をかけて頂き、ありがとうございました。じゃなければ、私、前の学校と同じ運命をたどっていたかもしれませんもの」
「そうか、カナちゃんも転校してきたんだもんね」
「カナ・・・ちゃん?カナちゃんって、なんですの?」
けげんにカナちゃんが聞き直した。
「あだなだよ。これから僕はあなたのこと、カナちゃんってよぶね」
「カナちゃん、カナちゃん・・・。ふふっ、ありがとう」
笑顔を見せた。その笑顔はとても、とてもかわいらしかった。
三叉路の前に立った。
「私は左側なので、ここで分かれますね」
「じゃあね、あ」
「前の学校について言いかけてたけれど、それはどうだったの?」
「気にしないでくださいな。では」
にっこりとほほえんで、そのまま三叉路の奥へ行ってしまった。
彼女も何かしらの秘密を抱えているということは分かった。
人はだれしも、秘密を隠すものだ・・・。
僕だって、人には言えない秘密があるだろう。




