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ヒトリムシ  作者: おかずシステム
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ようこそ 社木地区へ

ようこそ!川本町社木地区へ!


人口850人、面積176平方キロメートル、標高1500メートルという大自然の中の小さな山里にそこは位置しています。


名物は特産品のヤマイモや山菜、清流からくみ取った水ですくすくと育てられたワサビなど盛りだくさん!


現代社会の激しい競争社会から忘れて、懐かしきふるさとを感じられる社木地区にどうぞお立ち寄りください!


きっと地区の皆さんに歓迎してもらるでしょう!


(社木地区パンフレット'90)


「ふぅ・・・ん」


横に目をそらすと、簡単な略称の名所の地図がある。


パンフレットを鞄の中にしまった。


僕はここに行かなくちゃいけない。


理由も未だにわかっていないけれど、


いつもと同じような引っ越しなんだろう。


1990年夏。


これで9回目の引っ越しだ。


たった2か月で引っ越ししたこともある。


そのつど周りの人々から悲しまれたり、行かないでとせがまれた。


それをうまくかわすことになれたら、僕は人を信じることができなくなっていった。


結局のところ、僕は孤独だ。明確に孤独だと感じたことも幾度とある。


だからといって孤独に対して怯えたことも、なんとかしようと考えたこともない。


僕にとって「孤独」というもやもやしたものが危害となって襲いかかることもないし、


なんだかんだでやっていけた。もちろん今後もやっていけるだろう。


僕はモノゴトに流され、「はい」といいつづけた15年間だったのかもしれない。


だからといって僕は今日もまた、流れて「はい」といっている。


しかし次の引越しは僕だけ。つまり、本当の意味の独り身となる。


お父さんは戸籍上の存在だ。


僕と面を向かって対話したことも今日を含めて1か月に数回程度。


結局はいつもと変わらない引越しだ。


車窓から顔をのぞくと、7月の、熱い排気ガス混じりの風が僕にぶわりとぶつかってきた。


カーナビを見るともう近隣のZ県を指している。「約束の地」まであともうすぐ。1時間もないだろう。


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