お弁当
「さぁお弁当の時間だよ!弁当弁当♪」
初めてのお弁当タイム。
和美ちゃんはオリジナルのお弁当ソングを口ずさみ、
僕はカナちゃんを気にしつつ、3人の机をくっつけた。
「さあ、お食事ができておりますよ」
僕はまるでウェイターのように仰々しくお辞儀をした。
するりと車椅子で机にちょこんと落ちつくカナちゃん。
ちょっと強引にしちゃったかな、と思う。
しかし、カナちゃんはそれに嫌がらず、かばんの中から出したお弁当を机の上にのせた。
お友達効果が早速効いてきたかな。
「じゃあ御開帳といきますかな」
僕は恥ずかしながらパーソンマートで買ってきたオムライス弁当を開ける。
材料がなかっただけだもん!寝坊したとかじゃないもん!
「はーい、私のお弁当。じゃーん」
和美ちゃんは、日の丸ごはんに卵焼きと昨日のおかずの残り物。
まさに健全なお弁当だ。
僕のこの資本と俗物にまみれたお弁当と比べ物にならないほどの真面目な手作りお弁当。
「・・・・・・」
そして、カナちゃんが出してきたお弁当は・・・まさに絢爛豪華だった。
てらてらと輝く重箱段にうまい具合に揚げてあるエビフライ、新鮮さを全く失わない野菜のサラダ、
そしてどこからともなく水筒らしきものを取り出し、
カパッと開けると、田舎味噌のお味噌汁が揺れて輝いていた。
どこをとってもコンビニが勝てる要素なんか見当たらないだろう。
カナちゃんのお家には、まさか職人がいるの?
しかしカナちゃんはそれに驚く様子も微塵も見せず、その弁当を和美ちゃんにわたした。
「これ、あげますわ。私いらないの」
逆にその弁当が嫌な様子まで醸し出す。なぜだ?
そのかわり、和美ちゃんは弁当を交換し、
そして和美ちゃんはカナちゃんのお弁当を、カナちゃんは和美ちゃんの弁当を全部食べることとなった。
これでカナちゃんはもふもふと喜んでいる。
いったいどうしたことか。
やっぱり、そこにもお金持ちというコンプレックスが隠されているんだろうな。
でもそのお弁当、僕に欲しかったな・・・。
静かに、しかし穏やかで楽しげな雰囲気で昼食を迎えた。窓から降り注ぐ光が三人の間を照らし、窓から入り込んでくる隙間風がたまに3人の髪をなでた。
むしゃむしゃ、ぱくぱく。むしゃむしゃ、ぱくぱく。
「ごちそうさまでした!」
カナちゃんのお弁当に入っていたりんごを3人で分けて、食べて、昼食を負えた。
そして和美ちゃんがカナちゃんに話を切り出した。
「ちょっと強引にし過ぎちゃってごめんね」
「あなたたちが初めてです」
「何が?」
「私と一緒にご飯を食べてくれた人」
和美ちゃんはにっこりとほほ笑んで、
「私達もカナちゃんと一緒にご飯を食べるのは初めて、だから初めて同士だね!」
と返事をした。
カナちゃんはびっくりしたような顔をした。なるほど、そうか。
天然なのか、策略なのか、しかし和美ちゃんの放った言葉はカナちゃんの心にぐさっときたのだろう。
カナちゃんは目を輝かせて和美ちゃんを見た。
すごい。彼女のその魅力の一つが垣間見えた気がした。




