深夜の訪問者
「ピンポーン」不安定さ抜群のベルが鳴る。
新聞ならお断り。
僕はカップラーメンをすする手を止め、最後の砦、ふとんにもぐり込んだ。
「ピンポーン」「ピンポーン」「ピンポーン」
しかし、不安定な電子音はとめどなく鳴り続ける。
新聞勧誘ならここまではしない。
ならば、空き巣か・・・!
と思った矢先、ガチャガチャとドアを開ける音が!
しまった!カギを掛け忘れた!
玄関の電気を消しただけで満足してしまっていたが、こんな時にあだとなるとは!
このまま犯人の侵入を許してしまったら、僕の人生は終わるばかりか、大切なものも奪われてしまう!
死んでも放さないものがいくつかあるのに、死にはしない!
引っ越してくるときに必要だと思ってホームセンターで買ってきたフライパンを、
僕は段ボールから取り出した。
最初に料理するのはまさか人間とはね。
じりじりと前進する。
敵まで後数メートル、まだ姿は見えてこない。
犯人は玄関から進む気配がしない。
まっくらだから電気のスイッチを探しているんだろうか。
実に間抜けな敵だ。
気配が動いたら、敵の頭を打つ!打つ!打つ!
シミュレーションを繰り返した。
よし、できる!
出陣じゃああああああっ!!!!!敵は玄関にありいいいいっ!!
廊下をドタドタと走る僕はまさに戦国武将のそれだろう。
パチ、ジジッ、ピカッ。
敵の正体は和美ちゃんだった。
作り置きの夕飯の皿を置いているところだった。
そんな彼女の前に発狂して飛んでくる僕。
端から見れば非常に滑稽かつカオスな場面だが、
当の本人から見ればまったくもって恐怖の瞬間である。
彼女はそそくさと皿を置き、挨拶もなしに帰ってしまった。
美味しそうな焼き魚がこの場面の悲壮さを増長させる。
僕は何も言えず、凶器のひしゃげたフライパンを持ったまま立ち尽くしてしまった。
和美ちゃん、ごめん・・・。




