パーティー(2)
「嫌いって、どういうことだ?」
優真は、馬車に揺られながら、リンに尋ねた。
「嫌いなんです。この国の風潮とか、制度とか、色々と」
そういうと、リンはこの国の制度について、予備知識から話し始めた。
…………内容を要約すると、
・人は、メイン職業とサブ職業を持っており、メイン職業を知る術は、実際にその職業のスキルを使うことだけである。
・メイン職業のレベル上限は99で、サブ職業は30。そのため、世界的にもメイン職業がわかっている人が優遇される。
「異世界人を国が集めているのは、異世界人は自分のメイン職業を知っているからだそうです」
リンはそう付け足し、続けた。
・サブ職業は見習いから始まり、見習いレベル30で覚える上位転職で見習いを卒業できる。
・サブ職業は見習いではない職業であれば、自由に見習いに転職できる。
「ここまでは予備知識で、ここからが国の制度です」
・メイン職業がわかっている人に、サブ職業しかわかっていない人は、逆らってはならない。
「元々能力的にも逆らえないけど、法律化されることによってさらに厳しくなった感じです。そしてこんな法律があるから……」
・メイン職業がわかっている人からするとサブ職業しかわかっていない人には人権がないに等しい(ただし、衣食住は保証される)。
「高い税金に、商品の強制的な取り上げ、他にも、やりたくないことをさせられたりします。だから、この国が嫌いなんです」
「でも、これだと異世界人は集められないんじゃないか? 褒賞金を取り上げられるとしたら、誰も知らせはしないだろう」
と優真が尋ねると、
「さっきは言い忘れてましたけど、褒賞金といっしょに、『異界を招きし者』っていう称号が貰えるんです。この称号を持っていれば、メイン職業がわかっている人と同じように扱われます」
「この国は国民を餌付けしてるわけだ。ついでに、特大の餌をちらつかせて、有望な人材を集めてる」
「そして、メイン職業がわかっている人に、不満を抱かせない。すごーく、嫌なシステムですよね」
だが、優真はこのシステムにも穴に気がついた。
「でも、これで王に対する忠誠心って生まれるのか? メイン職業がわかっている人は、王に対する忠誠と引き換えに自由を得ている感じがあるけど」
「そこがまたこの国の闇です。保証されている食料に、実は微量の薬が入っています。…………思考力を下げる薬が」
その穴についても対策がなされていた。だが、それよりも、優真には気になることがあった。
「リンはなんで、そんなことを知っているんだ?」
今までの話を総合すると、見習い商人であるリンがそのことを知っているのはおかしいのだ。
「それは――――――」