パーティー(1)
スマホ復活しました。
昨日のはエイプリルフールネタじゃないですよ。
「助けていただき、ありがとうございます」
少女は優真に向かってぺこりと頭を下げた。
「死にたくなかっただけだから気にするな」
ニートとして自堕落な生活を謳歌するまでは、と優真は心の中で続けた。
「それでも、私が助けられたことは変わりません。何でもとまではいきませんが、何か、私がお礼にすることができることがあれば言ってください」
「それじゃあ、3つほどいいか?」
「思ったより多いですけど…… 内容によってはいいですよ」
優真はとにかく、情報と食料が欲しかった。そして、町に行きたかった。だから、優真が最初にお願いしたのは
「……君の名前を教えてくれないか?」
「……え? …………ああえと、リン・サレーションといいます。そういえば、名乗ってませんでしたね」
「そういえば、俺も名乗ってなかったな。俺は、田辺優真っていうんだ」
「タナベ・ユーマさんですか。家名がユーマだという人は初めて見ましたよ」
「あ、田辺のほうが家名で優真の方が名前だ」
「ということは…………………………」
そうしてしばらく沈黙が続いたかと思うと、リンはばっと顔をあげて、その琥珀色の目を輝かせながら、
「ユーマさんは、異世界人にゃんですか!?」
噛んだ。
「……ユーマさんは、異世界人なんですか?」
リンは、少しトーンを落として言い直した。
「えっと、なんでそう思うの?」
「名前が後ろにくるのは、異世界人しかいないんです」
「そうなんだ」
初耳だった。というか、まだこちらの世界で優真が会話したのはリンが最初(盗賊がいたけど、優真は盗賊をカウントしないことにした)だから、あたりまえではあるのだが。
「それだけじゃないです。さっきの攻撃は、どんな魔法使いも、どんな職業の人も、使っている噂すら聞いたことがないものだったからというのと、あなたの服装が、異世界人のそれに似ていたからです。だから最初に見たとき、そうなのかなあとは思ったんですけどね」
「なんでそんなに詳しいの?」
「異世界人は、国が集めていて、見つけた人は褒賞金が貰えるんです。そのために、町にいけば異世界人の服装や名前の特徴に関する本が売ってあるので、その知識です。あと、私は異世界にすごーく、興味があるっていうのもあります」
どうやら、この世界には優真以外の人間も送られて来ているようだ。
「ユーマさん。なんだか、このままだと話が長くなりそうなので、とりあえず馬車に乗ってください」
「え? ああ」
優真は少し、困惑した。だが、先程の話の内容から、理由は推測できた。
「俺を国に引き渡すためか?」
国が集めている、ということは良い暮らしができることは間違いない気がする。だから、優真としてもその提案とその理由は、ありがたかった。
「いえ、そういうわけではありません」
だが、優真の予想は外れていた。
「国王の元に行きたいのであれば止めませんけど、私があなたを国に引き渡すことはしませんよ」
そう言うと、リンは馬車に繋がれた馬を繋いだ木へと向かい、馬と木を繋いだ縄を解き始めた。
「…………だって、私は――――――――――」
縄を解き終わるのと同時に、優真の方を振り向きながら、言った。
「――――――――今のこの国が、嫌いですから」