強制戦闘イベント(1-1)
ここは、とある平原を突っ切る街道。メニュー片手に(実際は宙に浮いているのでこの表現は間違っている)歩く人間が、1人いた。
「そろそろ町1つくらいでてこないかなぁ……」
優真である。既視感を気にしたら負けである。
「そういや、レベル3でスキル1個手に入れたな」
優真はゲーマーレベル3で、新たなスキルをひとつ、手にいれた。
←×
スキル:エクスペンドLv.1
ゲームの世界を1つ、現実世界に展開する。パズルで戦うゲームを展開すれば、パズルでしか戦闘が行えなくなるなどの効果が表れる。主人公が自分とは限らない。
「無双ゲー展開しても、自分が武将ではなく雑魚になる可能性もあるってことか」
母数を考えるとそちらの可能性の方が圧倒的に高い。
「同時に1種類までしか展開されないみたいだから、使うゲームは考えないとな」
エクスペンド次第で、どうすれば何ができるのか、変わってしまうからな………… と、優真は今後、どのような状況で、どのゲームを展開するのかについて、考え始めた。
そうして考えごとをしながら優真が歩いて、丁度ちょっとした森に差し掛かると、前方に箱のようななにかと、複数の人影が見えた。
「おっ、第1異世界人発見」
実際には、優真の方が異世界人になるのだが、このときの優真は一切そう思わなかった。
「いるのは…… なんか厳つい男3人と2.5次元少女1人か。いや、男も2.5次元っぽいけど…………別の意味で」
いかにも荒くれ者な男は、優真に盗賊を想起させた。というか、実際に盗賊なのだが、優真は見た目だけで判断するということはしなかった。
そして少女は、ゲームで言うと町娘を想起させるような服装だった。村に住んでいるキャラよりほんの少し裕福で、容姿は整っているが、しっかりと着飾るということはしていないといった印象の服装だった。
優真はいかにも盗賊な見た目の男を警戒して、こっそりと、少しずつ近づいた。すると、優真の耳に、会話する声が届き始めた。
「見習い商人のお嬢ちゃんよォー、さっきから言ってるだろお?俺たちの言うとおりにすれば、命と多少の荷物は見逃してやるってさァ」
「……私は、あなたたちに屈するつもりほありません。それくらいなら …………………………私は、死を選びます」
そう言う少女は、手足を縄で縛られ、まともに動くことはできない。そして、盗賊を睨み付ける琥珀色の双眸とは裏腹に、震えていた。
聞き耳をたてて声だけを聞いていた優真は、
「絶対に関わりたくないな……」
と思った。そして、
(なんかこういうのって強制戦闘イベントがついてきたりするよなぁ……)
と、フラグめいたことを思った。
「……なら、力ずくで言うことを聞かせるまでだ!」
盗賊の拳が、少女を捉えた。
そして少女は、優真が隠れていた茂みの目の前に転がされた。
(やばい、バレる)
「お嬢ちゃんよォ、俺らの提案を受け入れる気になっ…………」
そこまで言った盗賊はワントーン低い声で、
「お前ら、予定変更だ。…………このこそこそしてたガキを始末する」
「「わかりましたぜ、お頭ァ」」
(ですよねー! うん、知ってた!)
優真は、いきなり、ピンチに追い込まれた。
次回、ついにエクスペンドが炸裂する! (ボキャ貧により残念になりそうで怖い)