商談(1)
地の文少なすぎた……
「おっ、街が見えてきた」
「あれは、この国の辺境としては大規模な街のひとつ、イルバーンです。鍛冶で有名な、鉱山都市です」
鉱山都市「イルバーン」。鉱山からは鉄はもちろんのこと、レアメタルも産出される。また、ごく稀にオリハルコンも産出されるため、多くの鍛冶師やその家族が暮らしている。鍛冶師が集まる所には勿論、ハンターと呼ばれる存在も集まる。
ハンターとは、戦闘系職業の人の中でも、モンスター討伐やダンジョン踏破、護衛や採取を生業として生活するために、クエストギルドに所属している人のことを指す。ちなみに、ハンター以外にも、冒険者や傭兵、死に急ぎ集団(←ヒドイ)などとも呼ばれている。
近くには、アルマ湖と呼ばれている湧水地があり、その澄んだ水も、鍛冶の味方をしている。アルマ湖から流れるブランシュ川の水は、近くの田畑(米はない)を潤している。
この街の欠点としては、地脈の影響でもの凄く薬草が育ちにくく、薬が少し高めなことだろう。
「そろそろ、ユーマさんの呼び方を戻しますね。……設定は徹底してね。お兄ちゃん」
「あ、ああ」
優真は驚きの連続のせいか、その設定についてついさっきまで忘れていた。
このとき、優真は改めて、リンはしっかりしてるなあ、と思った。
「商人ギルドに寄る前にちょっと鍛冶屋の人と商談するけどいい?」
優真は「もちろん」と答えた。
「わざわざ時間をいただき、ありがとうございます」
「うちの商品を買いたいって言ってくれた客だ。礼には及ばないよ」
「とりあえず自己紹介でも。私はリンと申します。サブは見習い商人です」
「うちはカエデ。サブは鍛冶師ってところだ……で、そっちのは?」
「うちの兄でして、ユーマと申します」
「兄妹というには、あまり似とらんような……」
「片親違いなもので」
「なるほどな。で、お兄さんの職業は」
「えーっと……」
「メイン職業が最近わかってな。その影響なのかサブ職業も変化してしまったんだ。で、他に聞いたことがない職業だったから黙ってても良いか?」
「兄さんは判明者でしたか」
「あ、いえ。兄は判明こそしていますが、登録してないので判明者ではないです」
判明者というのは、いわゆる特権階級のことだ。メイン職業が判明し、登録をすることで判明者となる。特権については数話前を参照のこと。
「ちなみに、私も兄と似たような状態です」
「判明しているけど、判明者じゃないということか」
「はい」
「…………お主らは馬鹿なのか? 登録すれば特権も手に入るし、商売だって有利に進められるだろうに」
少しくぐもった声でカエデは言った。
「そこには、ちょっと理由がありまして。条件を呑んで頂けるなら、お話しますよ」
「……条件を聞いて良いか?」
「まず、1つ質問に答えて頂くこと。この話を内緒にすること。それから、商品を売って頂けること。勿論、商品の値段は、相互協議のうえで決定ということで」
「たったそれだけなら、ぜひ、聞かせて貰ってもええか?」
「では、お話しますね。私達が登録していないのは――」
リンは、この国が嫌いであることを含め、話始めた。
「――つまり、これからしようとしていることの枷になりそうなので、登録しないんです」
「要は、格差を無くそうってことか。うち、その考えかたをしたことがなかったわ! なあなあ、それ、協力させて貰ってもええ?」
リンは、目を輝かせながら、答えた。
「もちろん!」




