会長のお気に入りになった覚えがない
俺は橘の方へと向き直ると、彼女は指をくいくいとさせて
「違う、背中に何か貼ってある」
「え」
俺は背中をさするが、そのような感触はない。
すると、橘は手を伸ばしてきて
「違う、ここ」
背中に手の温もりを感じると同時に、ぺりっと剥がれる音がする。
橘の手元を見ると購買のパンのシール。きっと一馬と隼人の仕業だ。
「さんきゅ、助かった」
「・・・」
お礼を言うと、無言で胸の前でオッケーというサインを送ってくる。
…案外可愛いとこあんのな。
橘にはまた後でと挨拶をし、屋上に戻ると隼人と一馬は談笑を交わしていた。
「圭おかえりー…って、ありゃ」
「なんだ気付いてたのかよ」
「気付いてたってこのことか?」
俺は二人に向けてシールを見せると、二人はうなずく。
「絶対バレないと思ったんだけどな?」
「まあ俺が気づいたわけじゃないんだけどな」
「は?」
こいつらに橘とのことを言うと面倒くさそうだからやめとこうと心に誓った。
ーーーーーー
「橘くんに新田くん。改めてようこそ、生徒会へ」
俺が今いるのは生徒会準備室。
埃臭いこの部屋で待っていたのは、満面の笑みを浮かべる西島会長と役員達だった。
「結局今年の一年から役員をやってくれるのは君達二人だけみたいだね」
「そもそも会長が指名したのは、堀田くんとこの二人だけだからよ」
呆れた顔で言う神田副会長。
なんでも生徒会役員は西島会長のお気に入りなんだそうだ。
「いや、俺はそもそも西島会長と面識なかったんだけど」
「大学の方じゃ首席の新田香織先輩の弟だろう?僕の興味はそれだけで尽きないよ、是非僕とこの学校を楽しませてほしい」
「はぁ…」
まあ俺の理由は分かったとしても、橘が指名された理由が分からない。学年3位だからというだけで指名されたとは考えにくいな。
と、西島会長が手をパンパンと鳴らして
「それじゃ交流も兼ねて自己紹介から行こうか?2年生の二人からお願いできるかな?」
「はいよー」
会長がそう言うと、男女二人の役員が前に出てくる。
「んじゃ私からね。私は2年の渡部美穂。会計を主に担当してるんだけど、図書委員も兼任してるよ。是非図書館に来た時はよろしくね」
最初に会長に対して、はいよーと反応してたのは渡部先輩の方だ。
渡部と書いて、わたべと読みそうだが、わたなべと読むらしい。気をつけないとな。
「次は俺か。俺の名前は矢野慎也。書記担当で、軽音部の部長を兼任してるんだ。音楽関係は任せてくれ」
確かに矢野先輩はミュージシャンっぽい髪型をしていた。それに加えて首にヘッドホンをさげている。
「次は3年生の僕達だね。まずは既に知っていると思うけど僕が生徒会長の西島光樹だ、よろしく」
「私は副会長の神田青藍です。会長と違って頼りないけどよろしくね」
先輩達の自己紹介は一通り終わる。
この流れだと俺達1年生もやった方がいいだろう。
「俺は1年の新田圭です。生徒会の経験とかないんで…そこらへんのところ教えてもらえると助かります」
先輩達が拍手してくれる。
渡部先輩なんかノリノリで手を叩いていた。
俺は自分の自己紹介が終わったので、橘に自己紹介しろと促す。
「…1年の橘里奈です。よろしく」
橘はごく簡単に挨拶を済ませる。
もう終わりかよ!って突っ込みたくなるが、今までに橘を見てきた感じだとここらへんが限界だろう。
「じゃあ夏休み明けの9月まではこのメンバーで学校を盛り上げていこうじゃないか」
「久々に賑やかになったわね」
先輩達は俺達1年生が入ったことにより、人数が増えて嬉しそうだった。
また俺もそんな中、このメンバーで生徒会として活動していくことに楽しみを感じていた。