この手の生徒会の権力はどうもおかしい
「ということで君達三人に頼みたいんだけどどうかな?」
俺と隼人、橘の三人はあれから昼休みに生徒会室に呼ばれていた。
俺たちの目の前には副会長の神田先輩が淹れてくれたであろう紅茶に、お盆を抱えた神田先輩、そして微笑んだ西島会長がいる。
「この学校に入学して間もないですが、毎年うちの生徒会では第一学年から生徒会長が役員を推薦する規定がありまして」
「強制とは言わないよ、飽くまで推薦なんだ。もちろん入って貰えたら嬉しいけどね」
俺は家事に差し支えがなければ問題ないのだが、隼人はバスケ部に入るだろうから生徒会との両立は難しいだろう。
「すみません西島先輩、俺はバスケ部に入るつもりなのでお受けできません。しかし、圭なら生徒会役員として活躍してくれるでしょう」
「おま、何勝手なこと言ってんだよ!」
「そうか、堀田くんが入ってくれないのは残念だが、新田くんが入ってくれるなら嬉しいな」
「…条件によりますよ、放課後の自由が極端に奪われるのでしたらお断りします」
姉貴の世話もあるから、これでは居候している身として頼りきりになってしまう。
「新田香織先輩…圭くんのお姉さんの心配をしているのかな?」
「西島先輩、俺の姉貴をご存知なんですか」
「ああ、そうだよ。何故なら新田先輩は藤沢大学の中でも秀才だと言われているからね」
そうだ、俺の姉貴は俺と同じように田舎で一生を過ごすことを嫌ったのだ。高校は家から近くのところを選んだものの、大学は都心の方を選択した。まさかそれが藤沢大学だったとは…
しかし、秀才と言われてる姉貴が家でああだというのは周りに知られていなくて良かった。
「君が居候の身だというのもね。色々生徒会長を務めていると耳に入るんだ」
いや、生徒会長だからといって俺の素性を知っているのはどうかと思う。
「まあ事情を知っているなら話が早くて助かります。んで、活動内容としては如何程なんでしょうか」
「まあ行事が近付いてくると忙しくはなるかもしれないね。しかし、部活動に入るよりは君の生活を圧迫しないとだけ言っておこう」
「ほう」
それは理想的な提案だ。
学校に入学して生まれた悩みの種が早くも解消されそうだ。
「ちなみに生徒会に入れば、君達の目の前に並ぶそのティーセットも毎日楽しめる。どうかな?」
「ふむふむ」
紅茶に詳しくはないが、高級な茶葉を使っているのが何となく分かる。
そしてとてつもなくうまい!
「お話聞かせてもらいました。わたくし新田圭、是非とも入りましょう」
「よかった、ところで…橘くんはどうする?」
そうだ、あまり会話に参加しないから橘がいることを忘れていた。俺自身、橘とはあまり関わりたくないため断っていただけると学校生活の安寧が保てるのだが…
「…この学校は部活動に強制参加と聞きます」
「うん、そうだね。しかし、生徒会に入ればそれを免除することができる」
「・・・」
「どうかな?よければ橘くんには是非入ってもらいたいのだけど」
西島会長の問いかけに対して橘はうなずく。
と、同時に俺は肩を落としたのだった。