平穏な高校生活なんて最初からなかった
「橘が自分から男子に話しかけるなんて珍しいな」
「俺自身もびっくりしてるんだが…」
たかが朝に少し話した程度の関係であるのに、他の男子と差がつくわけでもなさそうだが…
俺にもモテ期が来たのか!?
「顔がにやけてんぞ圭、独身貴族を謳ってたのは誰だ?」
「独身であり続けるのは当たり前だ、だけどモテて嬉しくないわけないじゃないか」
「橘さんに一言話しかけられたくらいでモテてるなんて、頭の中お花畑かっつの」
一馬が呆れた顔でとぼとぼ歩いてくる。
「橘さんにフラれちゃったみたいだから情報収集の仕方を変えないとな」
「は?」
そういって一馬が俺の肩に手を置く。
「お前はなんか好かれてるらしいからな、頼んだ」
「パスだ、パス。俺は普通に高校生活を送りたいんだよ、勘弁してくれ」
そこで隼人が閃いたように手をポンとして
「お前部活悩んでたろ?なら新聞部に一緒に入ればいいいじゃないか」
「俺はなんとか部活に入らなくていい方法を知りたいんだが」
「部活に入らなくていい方法なんて生徒会に入ることくらいしかないぞ」
「まじかよ」
あんな完璧生徒会長と肩を並べて仕事なんて出来るわけが無い!
やっぱり部活に入るしかないのか…?
「まあ橘さんの情報を集めてくれるなら一緒に新聞部に入らなくていいさ」
「いやいや、あんまり橘とは関わりたくないんだが」
「おいお前ら、ちょっと周り見てみろって」
そういえばさっきから橘のクラスの連中からの視線が厳しいな。
もうここまでの人気があるとは凄まじすぎる…
ーーーーーー
あれから二人とは別れて、スーパーで食材を買った後に家に帰ってきていた。
今は夜ご飯のカレーを準備している。
姉貴は大学に行っていて、もうそろそろお腹を空かせて帰ってくる頃だろう。
「ただいまー」
「おかえり」
疲れた顔をして姉貴が帰ってきた。
部屋を見渡してから息をすぅっと吸うと
「今日のご飯はカレーか、私が食べたいものを作ってくれるとはやるなぁ圭」
「姉貴がカレーが食べたいってメッセージ送ってきたからだろ、そろそろできるから早く荷物置いてきなよ」
「はいはい」
こうして姉貴と話していると、1日が終わったのだと感じられる。
これから過ごしていくだろう仲間とも出会えたし、これからの生活も楽しくなるだろう。
だが、一馬が学園のマドンナになるだろうと言っていた橘里奈には気をつけなければいけない。
隼人が言っていたファンクラブの幹部連中も藤沢高校に入学してきているし、安全な高校生活を送るためにも近づかないようにしなければ!
ーーーーーー
「おはよう圭」
自転車で登校途中、同じく自転車で登校してきている隼人に声をかけられた。
「おはよう隼人、お前家近かったのな」
「家から近い高校を選んだからな」
他愛もない会話をしてるとあっという間に高校に着いた。
改めて自転車を考えた偉人は素晴らしいと思う。昨日徒歩で通った時はあれだけかかった時間が自転車だとあっという間だ。
時は金なり。みんなも是非自転車に乗ってみて欲しい。
「おい圭、なにしてんだよ!ちょっとこれ見てくれ!」
妄想にふけてると、隼人が焦った様子で掲示板を指さす。
『第一学年成績首位堀田隼人、第二位新田圭、第三位橘里奈を生徒会役員として推薦する。 生徒会長西島光樹』
「な、なんじゃこりゃ…」
俺の平穏な高校生活は二日目にして終止符が打たれたのだった。