後ろの席の奴の顔は確認しといた方がいい
そんなこんなで俺は隼人と肩を並べ歩くこととなった。
「てかどうして名前も知らなかった俺に対して、あの子に近づかないように注意喚起してきたんだ?悪い子じゃなさそうだったが」
「あいつ橘里奈っていうんだけど、俺と同じ中学だったんだよ。ところで圭、橘の事見て何か思ったことあるか?」
「思ったことか?まあなんか、整った顔はしてると思ったぞ」
なんとなく頭の中で美羽と比べてみた。
顔は五分五分だが、性格を比べたら美羽が難ありだからな、間違いなく橘に軍配が挙がるだろうな。
「圭はそんなんで済んでるけどな、俺の中学の男子連中はたちまち彼女に一目惚れってわけで」
「学校のアイドルみたいに持ち上げられたわけか」
「そういうこと。しかもファンクラブまで出来ちまって、その幹部連中が俺たちと同じ藤沢高校なんだ」
「なんか橘すげぇなおい」
彼女彼氏と同じ高校に行くなら分かるが、自分達が憧れているマドンナを追っかけて進路を定めるなんて凄い執念だぞ。
「まあそのファンクラブが結成されてからというものの、橘に近付く奴はすぐに目をつけられ、ある奴はファンクラブの一員に、ある奴はゲイになった」
怖ぇえええええ!!ファンクラブ怖ぇえええええ!!
独身貴族を語っているが、エロスは別だ!それがゲイになることによって奪われるのはごめんだな…
「絶対近づかないわ、マジで助かったわ。隼人はメシアか?」
「俺はお前が助かってよかった。元中の友達はもう何人もやられてしまったからな…」
隼人はそういうと顔を背ける。頬には一筋の涙が…
マジでお前の中学じゃなくてよかったよ。
ーーーーーーー
そんなこんなで俺らは学校に到着。
昇降口前ではクラス分けが書かれた紙が配られてるらしく、それを受け取った生徒が校舎へと入る姿が見える。
いち早く受け取りにいった隼人が俺の分を渡してくれる。
「俺たち同じクラスだぜ。運命だな、一年間よろしくな。」
「何となくお前とは長い付き合いになるとは思ってたんだよ。んで、問題の橘とは……別だな、よし。」
これで俺の輝かしいシャイニースクールライフの安寧は守られました。ありがとうゴッド。
ちなみに、俺たちが1年A組で橘は1年F組。端と端だから何があっても交わることはなさそうだ。
「圭、俺新入生代表挨拶担当だから職員室寄らなきゃいけないんだわ。すまんが先に教室行っててくれないか?」
「お前新入生代表だったのかよ、了解。」
ってことは入学試験で首席ってことかよ。なんか俺もしっかりしなきゃいけねーな、うん。
っていっても実は入試試験2位だけどな、俺。
教室に入ると、もうグループになって話してる奴もいれば、鞄を忙しなくいじってたり、スマホをいじってたりとそれぞれが好きに時間を持て余していた。
俺はとりあえず席についてエロ本をセット。まずは後ろの奴に差し入れでもしてやろう。
「はじめまして、つまらないものですがどうぞ」
「え?」
女子だったから光の速さでエロ本は引っ込めた。
なんなんだよ、ふざけんなよ。入学早々ぼっち決め込むところだったわマジで。