不信感
三上は、自分がサックスパートに選ばれるのに自信があった。
三上は、先輩達にやる気がある事をこれでもかとアピールをした。
後日、入部希望者を集め、担当楽器の発表があった。
緒方は1回生を1人ずつ読んで言った。
「フルート(Fl):溝口
クラリネット(Cl):中井、橋口、稲村
サックス(Sax):中谷
トランペット(Tp):松村、森山
ホルン(Hr):池谷、角南、三上
トロンボーン(Tb):太田、岸辺、松下、吉村
ユーフォニウム(Eu):桐谷
弦ベース・エレキベース(Cb):金田
チューバ(Tu):太田、野田
パーカッション(Per):岡山、笹野
以上が一回生のパート割りとなります。」
”マジか!”
三上は、驚いた。
あれだけアピールした自分がなぜ、サックスやパーカッションに落選したのか不思議でならなかった。
後日、三上が情報を集めて選抜した理由が、次のとおりであることがわかった。
Flの溝口
特徴:ロン毛の男 身長は175cmで瘦せ型で風呂にあまり入らない不潔なメガネ。服のセンスは、黒が多くシルバーアクセサリーをつける。なぜか自分が未来の部長だと思っている。
この話での呼び名:ロン毛の溝口
楽器の経験:軽音楽を経験
楽器のセンス:良い方で、リズム感あり。
楽器の決定理由:唯一のフルート希望者で希望通り、フルートになる
Clの中井
特徴:短髪で目が大きく、まつ毛がクリンっとしているのが特徴的な男。服のセンスは、古い。身長は163cmで体型は普通。お笑い好きで軽快なトークで周りを盛り上げる。何でも器用にこなす
この話での呼び名:芸人の中井
楽器の経験:なし
楽器のセンス:普通、リズム感あり。
楽器の決定理由:第1希望どおり
Clの橋口
特徴:短髪で眉毛が太くいつも眉間に皺が寄っている男。服のセンスは、黒と赤が多い。身長は164cmで体型は普通。無口で変人。いつも少女漫画を読んでいる。マーチングのガードに憧れる。
この話での呼び名:眉毛の橋口
楽器の経験: なし
楽器のセンス:全くない
楽器の決定理由:第1希望どおり
Clの稲村
特徴:センター分けのよく見るとイケメンメガネ。身長は170cmで体型は普通。チェックのシャツにジーパンのオタク系ファッション。自作の小説を作り、その世界に浸っている変わり者。
この話での呼び名:ブロックの稲村(ブロックとは自作の小説の題名から引用)
楽器の経験:なし
楽器のセンス:クラリネットでNo.1。
楽器の決定理由:サックスを希望していたが、第2希望のクラリネットになる。サックスは、2回生の人数が多いため希望がとおりにくい
Saxの中谷
特徴:セミロングで黒髪の猫顔の女性。身長は158cmで体系は、普通。センスは、よくいる女子大生。声が甲高く笑い声がキャッキャ言うため、中谷がどこにいるか声でわかる。
この話での呼び名:猫目の中谷
楽器の経験:トランペットを高校時代に経験
楽器のセンス:トランペット経験者であるため、吹くのは得意だが、リズム感に自信なし。
楽器の決定理由:サックスが第1希望だったため、満足している。もうトランペットは吹きたくない模様。決定理由は謎。
Tpの松村
特徴:小柄で、オシャレな髪型が特徴。服もおしゃれ。身長は164cm体型は、細身。松村は音楽大学に入ろうとして1年浪人したため、1つ年上。ちなみに音楽大学はあきらめ、K大学に。
この話での呼び名:一つ上の松村
楽器の経験:クラリネットを高校の頃に経験
楽器のセンス:演奏センスはあまりないが、絶対音感を持っている。
楽器の決定理由:高校時代、クラリネットを担当していたが、既にトランペットを購入しており、当然トランペットに。
Tpの森山
特徴:長身イケメンの茶髪のセンター分け。身長は180cmで瘦せ型。プライドの高さが後々トラブルになる。
この話での呼び名:イケメンの森山
楽器の経験:中学からトランペットを経験。楽器の腕前は、かなりのもの。
楽器のセンス: 経験年数どおり
楽器の決定理由:経験年数により問答無用でトランペットに。
Hrの池谷
特徴:角刈りのダサいメガネを掛けているThe変人。身長は164cmで体型は普通。授業中は、キョロキョロして不審人物のようだ。友達は、ほぼいない模様。練習も全くしない。
この話での呼び名:変人の池谷
楽器の経験: なし
楽器のセンス:まるでない。リズム感も全くない
楽器の決定理由:ホルンを第1希望にしており、辞めそうだったから希望を通した。
Hrの角南
特徴:ショートカットの美人で、目鼻立がはっきりしている。身長は168cmで体系は普通。しかし、基本的に無表情で何を考えているか不明。
この話での呼び名:美人の角南
楽器の経験:高校からホルンを吹いており、楽器は無難に吹ける。しかし、高い音を出すのが苦手という弱点を持っている。
楽器のセンス:普通
楽器の決定理由:経験者だからという理由
Hrの三上。
特徴:本作の主人公。髪型は、長くもなければ、短くもない普通の髪型。ルックスも普通ではあるが、顔面偏差値の低い本クラブの中では、見方によっては、イケメンに見えなくもない。身長は173cmでテニスをしていたこともあり、細マッチョ。クラブ全員の中で一番やる気があることを自負している。しかし、そのやる気がトラブルに転じてしまうこともしばしばある。
この話での呼び名:三上
楽器の経験:なし
楽器のセンス:なし。現時点でスポーツのように捉えていることで、今後色々な面で苦労することになる。ドラムを叩くゲームが得意ということもあり、リズム感はある。
楽器の決定理由:希望者の少ないホルンに一番辞めなさそうな三上を選んだようだ。やる気をアピールしたことが裏目に出る結果となった。
Tbの太田
特徴:茶髪でロングヘア―の細目の女性。長Tシャツをよく着ている。身長は162cmの細身。練習が嫌い。演奏する事よりもマーチングのガードに興味がある様子。
この話での呼び名:長Tの太田
楽器の経験:高校でTbを経験しており、卒なく演奏できるが、特筆して技術が高いわけでもない。
楽器のセンス:普通
楽器の決定理由:経験者であること。
Tbの岸辺
特徴:角刈りで身長は162cmのぽっちゃりしているが、力が強い。頭が良いが傲慢なところがあり、一部の同回生から嫌われている。
この話での呼び名:ガッチリ岸辺
楽器の経験:なし
楽器のセンス:カラオケが得意であるが、Tbのセンスはあまりない。曲は演奏できるが音質が悪い。
楽器の決定理由:上の回生のTbの人数が少ないための人数合わせ。ちなみに第1希望は、Tbで希望どおり
Tbの松下
特徴:茶髪の短髪。身長は163cmでぽっちゃりしているようでもあり、がっちりもしている。シルエットがTbの岸辺とそっくり。お調子者で明るいタイプ。但し、気分屋で機嫌が悪いと周りが気を遣う程になるため、手を焼く存在。
この話での呼び名:ジャイアン松下(強そうという理由で)
楽器の経験:なし
楽器のセンス:学生時代に合唱の経験があり、リズム感も音楽のセンスもNo.1
楽器の決定理由:岸辺と同じ。ちなみに第一希望は、サックス。
Tbの吉村
楽器のセンスはあるが、リズム感に不安はある。
Tb決定理由は、
特徴:身長は182cmの長身で長くもなく短くもない髪型。かの有名なアニメのべんぞーさんに似ていることから、彼は、べんぞーと呼ばれている。面白くもない基礎練習を何時間でもできる努力家。やる気は、三上ほど表に出ないが、内なるやる気は三上に次ぐレベル。
この話での呼び名:べんぞーの吉村
楽器の経験:なし
楽器のセンス:センスはある方で、リズム感に難あり。
楽器の決定理由:岸辺と松下と同様で、自分の希望通りにはいかず、人数合わせ。
Eu桐谷
特徴:身長は170cmで顔が濃い、茶髪の短髪ハンサムでやせ形。桐谷の弱点は、女好きであることからしばしばトラブルに巻き込まれたり、軽い男と思われており、女性から敬遠される存在になる。
この話での呼び名:垂らしの桐谷
楽器の経験:中学校からEuを吹いており、楽器の技術は森山と肩を並べる。
楽器のセンス:ある。
楽器の決定理由:絶対的な経験者であるため、即戦力でEuに決定。
Cbの金田
特徴:バイク乗りでイケメン、髪型は普通。身長は168cmで体系は、ガッチリしている。性格は、温厚でうちに秘めた情熱がある。
この話での呼び名:バイク乗りの金田
楽器の経験:高校時代にエレキベースを経験している
楽器のセンス:高く打楽器や鍵盤やピアノもなんなくこなせるスーパーマン。スーパーマンであるため先輩から好かれている
楽器の決定理由:高校時代の経験により決定
Tuの太田
特徴:身長は168cmのガッチリ体系の苦学生。クラブに対する情熱は、皆無でやる気はない。
この話での呼び名:センスの太田
楽器の経験:なし
楽器のセンス:楽器のセンスは松下と並ぶ程のセンスの持ち主で1回生の中で1,2を争う存在。
楽器の決定理由:楽器は、なんでも良いといった結果、人気のないTuになった
Tuの野田
特徴:身長は165cmの110kgの巨漢。Tuも大きいため、楽器の体系とピッタリ合っている。ルックスは、かの有名なア〇パ〇マンに似ており、1回生のマスコット的存在で女性から「可愛い」と言われる程。
この話での呼び名:野田パンマン
楽器の経験:なし
楽器のセンス:音楽センスもリズム感もないが、個人練習は好き
楽器の決定理由:太田と同じでなんでも良いといった結果、人気のないTuになった。
ちなみに太田とは友達。
Perの岡山
特徴:いつも微笑みを絶やさず、優しい雰囲気で身長は156cmの小柄でやせ形のショートカットの女性
この話での呼び名:岡山プロ(もちろん本物のプロではない)。
楽器の経験:中学からやっておりPerのスペシャリストで打楽器であれば、なんでもこな
すスーパーウーマン。先輩を入れても3本の指に入るほどの技術。
楽器のセンス:ある
楽器の決定理由:経験と技術を買われ、問答無用でパーカッションに。
Perの笹野
特徴:へらへらしており、身長は175cmのやせ形。基本的にやる気はなさそうな雰囲気。
しかし、音楽自体は、好きなようで本人談でマイペースに練習がしたいようだ。
この話での呼び名:自由人の笹野
楽器の経験:なし
楽器のセンス:あまりない。練習嫌いで三上とぶつかることもしばしば。
楽器の決定理由:一番辞めそうだったため、彼の希望を通し、三上を落としたようだ。
以上のことを先輩から後日、聞き出した。それがわかってからも三上は、なかなか納得できなかった。
緒形は、説明を続ける。
「以前にも説明したとおり、練習は月~金の18時~20時まで練習を行います。あと月曜日~金曜日の12時25分から13時5分まで足上げの練習を行います。」
「?」
説明を聞いている1回生の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。
垂らしの桐谷が手を挙げ質問をした。
「昼休みは、12時15分~13時15分までですが、昼ごはんは、いつ食べるんですか?」
緒形は答えた。
「間の時間に食べるんだよ」
「?」
再度、説明を聞いている1回生の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。
緒形の言っていることを要約すると昼ごはんは、空いている時間に早弁か遅弁をやれということだった。
1回生は、納得していなかったが、ロン毛の溝口が手を挙げ質問をした。
「足上げって何ですか?」
「マーチングの歩く練習のことだよ。もちろん明日もあるから、明日は見学の時間とするから12時25分にホール集合ね。」
緒形は、淡々と答えた。
それから緒形は、吹奏楽部の鉄の掟を4つ1回生に説明した。
1.先輩のことを〇〇さんという風にさん付けで呼ぶこと。
2.先輩とどこで何時に会っても、自分から「おはようございます。」と挨拶すること。2回目からは、「お疲れ様です。」帰る時は「失礼します。」を徹底する。
3.OBさんと会ったら、お辞儀して「オス!」と挨拶すること。
4.先輩に奢ってもらったら、先輩よりも早く店を出て店の出口に整列をして、奢ってもらった人の名前をつけて「○○さんごっつあんでーす。」と全力で声を張り上げて礼をすること
5.部活に来た時と帰る時に部室の名札を裏返すこと。
これらの説明を受け、その日は解散となった。明日は、昼に足上げの練習。夜からパート(楽器ごと)の交流会があるとのことだった。
三上は、自分がサックスになれなかったショックと毎日歩く練習を行い、昼休憩が無くなることがショックだった。吹奏楽部の取り締まりは厳しく応援団かなにかと勘違いしているんじゃないかと三上は反発心が芽生えていた。
次の日
1限目、2限目と授業を受け、クタクタになった後、ホールに向かい、先輩の足上げの練習風景を見学することになった。
「フォアーード!・・マーチ!」
「はちとー、いちとー、にーとー、さんとー、しーとー・・・」
吹奏楽部の先輩達がホールで、横一列に並び、背筋を伸ばし、両の掌を鼻の前で組んで奇妙な掛け声を張り上げながら歩いている。
「こんな話聞いてないぞ」
と心の中で、連呼した。
ワエは、どこで判断を誤ったんやろうか…
こんなの吹奏楽じゃ全然ないぞ。
歩く練習を続ける先輩達を見学して、これになぜ練習する必要があるんだ。三上はさらに不信感を募らせた。
見学が終わった後、友達の山本と授業が同じだったため、合流した。
山本は昼飯の誘いを断った三上に尋ねた
「どうやった練習は?」
「あれは、宗教やな。入部する時にこんなこと言ってなかったし、詐欺やで詐欺!昼飯も食べれないし!」
三上は、怒りを山本にぶつけた。
「だから言ったやん!大学の部活はマジやって!」
三上は、予め山本から忠告されていたため、三上は、言い返すことができなかった。