表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1、小説を書く動機について

 「歴史改変戦記」は数年前に書いた小説です。

  最初は短編でした。タイトルも「海市」としたかったのですが、同名の有名な小説があるので。「碧海の青銅を磨けるを」としていました。

 数人の友達にメールで送りつけて、無理やり感想を聞きました。

 「この笑いには悪意があるね。」

 ある友人からそう言われて、我が意を得たりの気分でした。

 この小説はそのままお蔵入りし、PCの中で眠っていました。


 なんでこんなものを書いたのか。

 私の中にある怒りがあって、それがどうしようもないものであって、どこかにぶつける必要があったからです。

 その怒り、とは何か?


 当時、私は中国との貿易の仕事をしていて、多くの中国人と親交がありました。お互い文化が違いを認めてしまうと彼らとの交友は面白いものでした。

 特に中国の歴史の話題を持ち出すと、中国人たちは嬉しそうに答えてくれました。

 陳瞬臣の「中国の歴史」全八巻(一巻500ページくらいある)を読んだのも彼らとの話のネタにしたかったからという理由もあります。


 その頃、尖閣の問題が浮上し、テレビなどでは中国批判がクローズアップされていました。中国では反日デモが起っていました。

 日本人の中には中国人に対する差別的な言葉を使うものもいました。

 私はただ悲しかった。


 この悲しみが怒りに変わり、行き場を失いました。

 その時に突然、この小説のプロットを思いつきました。

 書いてみよう。

 書き始めたとき、怒りは笑いに変わっていました。

 だから、この笑いには悪意が込められているのです。


 小説を書くために動機が必要なのかといえば、必ずしもそうではありません。

 ただ、動機は物語のテーマを重層的にします。

 この小説の中では中国も韓国も日本も揶揄しています。そして、この揶揄は愛情の裏返しでもあります。

 だから、主人公は侵略戦争に否定的でありながら、信長の中国侵略を肯定的に実行するというアンビバレンスな立場を綱渡りできるわけです。

 これが単に中国批判ならば、物語はもっと単調になります。テーマの重層性もなくなります。


 「小説家になろう」に投稿しようと思ったのは、まだ言い足りないことがあったからだと思います。

 タイトルもラノベっぽくしました。

 中盤から新しいエピソードを挿入し、戸部典子を登場させました。オリジナル版では主人公の一人語りでラストまでひっぱりますが、長編にするにあたりこれでは持たないことに気づいたからです。

 戸部典子は美少女設定だったはずなんですが、こいつは勝手に動いてしまうキャラクターなので、作者にもコントロール不能になりました。

 中盤では大陸における戦国武将たちの活躍が描かれます。主人公たちはこれをモニター観戦しているという奇妙な設定ができました。モニターに向かって声援を送ったり、批評したり、時には飲食しながら、神様の位置から歴史を眺めているわけです。

 これも、物語の構造が批評的な視点を持っていることの反映です。動機事態が批評的なものだからこうなるのです。


 最初からそれを意図していないにも関わらず、動機は物語の方向性を規定してしまうものなのです。

 書いていて何度も何かが憑依しているのではないか?そう思うことが度々ありました。動機が憑依していたわけです。


 戸部典子も「売国奴」の回で退場予定でした。最終回は戸部典子の居ないオリジナル版に戻るはずだったのです。ところが、参考人招致のエピソードで帰ってきてしまいました。

 「戸部典子」の回はボロボロ涙を流しながら書きました。

 気持ちが入ってしまったのです。


 物語のテーマとか書く動機とか、今のラノベの作者さんからみたら古臭い思想に思えるかもしれませんが、書く前に何故、この物語を書きたいのか考えてみるのも面白いのではないかと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ