21・交流「楽しい荷物持ち」
今日は探索を始めて……はぁはぁ、一週間? 忘れた。
クラウスこと俺は、二十一階層にて女子高生らの荷物持ちさせられてます、はい。
『クラウス〜。段々前との距離が開いていってるよ』
「はぁはぁ……俺体力ないんだわ。もう走る気力もない」
自分のも合わせると俺は六つもリュックを持っていた。
言っとくが半端な重さじゃないぞ?
金貨だけウィルに預けといてよかった。
いや、格納の指輪もらっとけばよかったな。
『捨てればいいよ。持ってあげる必要なんてないよ』
「別の意味で追いつけなくなるじゃねえかよ」
ただでさえ冷遇されてる今の状況で、荷物捨てましたなんて言えるかよ。
追いついた時のあいつらの顔を思い浮かべるだけで背筋が凍るわ。
一番重いやつ捨てるか……
あ、俺のが一番重かった……なんでだよ!
息を切らしながら必死に追いつこうとする俺ってかわいそう。
だが無情にもそれに反比例するかのごとく、彼女たちとの距離は開いていく一方だった。
「あいつら、いい加減に振り向けよな……はぁはぁ」
ちょっとぐらい休憩入れてもバチは当たらんぞ? 全く……
しかも、遠目に見えるウィルの楽しそうな顔が余計に腹がたつ。
あいつら、まさか俺を置いて行く気じゃないだろうな?
魔法がほとんど使えない俺が一人になったら……
『クラウス! 後方から敵が近づいて来る!』
チェルノの緊迫した声を耳にした俺は、すぐさま辺りを見回す。
チッ……初エンカウントがよりにもよって俺一人の時かよ。
どんな敵が出るか聞いとけばよかったな。
魔法一強の階層か……
うーむ。
「チェルノ! まずはバリスタだ! 接近戦になったら二刀で頼む」
まずは近づかれる前に物理攻撃が通用するか試す。
魔法しか手段がない接近戦となれば、二刀で速度上げて魔法撃ちまくるしかないしな。
握りしめた弓を構え準備を済ませると……来た!
敵は……どうやら一匹だけのようだ。
それなら十分に逃げることも可能だ……助かる。
だがあれなんだ?
青白いモヤのような……まさかゴーストってやつか?
とてもじゃないが矢が通用する相手じゃなさそうだった。
……ん?
なぜか視界に収めているはずの敵の姿が、段々と薄くなっているような気がする。
俺は目を擦り、再度その幽霊を見た。
すると今度は輪郭もわからなくなっていた。
そしてオーラのような白いモヤも見えなくなると、俺はゴーストを完全に見失っていた。
「チェルノ! 二刀だ! てか敵どこいった?」
『大丈夫、影が見えるよ! クラウス、ライトの魔法かけ直して!』
両手にそれぞれ剣が現れると同時に、俺はライトを詠唱し直した。
やっぱり魔法しか通用し無さそうだ。
くそ、チェルノに攻撃魔法覚えてもらっとくんだった……
だが今更言っても始まらない。
相手が倒れるまで俺のしょぼい魔法を撃ちまくるしか方法はなかった。
「俺の知力じゃ10mも飛ばねえぞ……参った」
『あのねえクラウス、だーかーらー、魔法を増幅して使えるって言ったでしょ?』
いやいや、だーかーらー、杖はお前が食ったって言ってるでしょ?
わからん奴だなーこいつも。
そうこう言ってるうちに目の前にいたゴーストが姿を表す。
相手との距離はまだ30mってとこか。
もう少し引き付けないと……
『スターレイ』
ん?
チェルノがボソッと何か言うと「キッ!」っと俺の頭上から音がして……
——ボボボン! ——ボボボン!
と言う音と共に、火柱がゴーストを中心にクロスしながら爆煙を上げていた。
その煙が飛散した後には……ゴーストの影も形も残ってはいなかった。
え……一撃?
……はぁ???
いやいや、それ俺の魔法なんですが……
え? ……チェルノの言ってた、使えるってそういうこと?
「魔法を増幅して使えるって……チェルノが俺の魔法を使えるってこと?」
『だーかーらー、最初からそう言ってるじゃない。クラウスが撃つ魔法を増幅して使うことができるって!』
言ってねえ!
異議ありだ!
文章が少し違ってるぞ!
「え? ちょっと待て。お前知力いくつだ?」
ここでギルドカードを確認することにした。
クラウス・12911 位
Lv 49・無職・到達階数 : 21 所持金:0
STR : 17(+4) CON : 17 DEX : 17 AGI : 17 INT : 17 WIS : 17
魔術(火 : Lv4 水 : Lv1 土:Lv1 風:Lv2 光 : Lv4 陰:Lv4 闇 : Lv4 聖:Lv3)
剣術:Lv49(二刀:Lv105 両手:Lv52)弓術 : Lv195
チェルノ・(契約:魔法生物)
Lv 48・液体金属・到達階数 : 21
STR : 0 CON : 6 DEX : 20 AGI : 28 INT : 28(+8) WIS : 23
魔術(雷:Lv2 闇:Lv5 聖:Lv3)
スキル(魔法攻撃:特大)
28+8って……え? ちょっと待って、指が足りない。
しかも主人を置いてスキル習得するってどういうことよ。
こいつの成長方法が「食うこと」なのがもうね……羨ましい。
「凄まじい知力だな。スターレイであの威力なら雷雨嵐は一体どうなるんだ?」
さすがにLv8は覚えられないか。
でもチェルノ雷に適性あったよね?
『期待させて悪いんだけど、多分クラウスの魔法しか増幅出来ない』
「そっかあ……え? ……つまり?」
意味がわからない俺は、チェルノに詳しく話を聞いてみた。
要するにだ。
チェルノが「杖」という武器に変身し、俺が装備するという形で効果を出してるらしい。
知力と詠唱が武器に依存してるってところが、この杖の特殊能力ってことだな。
本来は知力が低くても魔法が撃てる杖だったはずが、
チェルノが食べることによって化けたと……
「つまりだ……俺たちにとって二十一層って」
『余裕だね!』
唯一残念なのは、俺の力じゃないってことだけだな。
あと、本体の知力が上昇しない杖って意味あるのか?
俺の存在って一体……
いや、チェルノは俺の一部ってことで、開き直っていくか。
まあ、とにかくだ!
「あいつらの荷物は運ぶ。置いてくとカッコ悪いしな。だが俺は魔法使い! 率先して敵を探すぞ!」
『オー!』
俺たちはそう意気投合するとゴーストを探しを始めた。
え? 仲間?
チェルノのことかな?
—
俺たちは時間も忘れてゴースト狩りを続けていた。
やっぱ魔法使いって夢があるよなー。
だが魔術師に転職することは出来ない。
装備の制限を受けると、チェルノが生かせないのだ。
もしかして俺って一生無職?
『またいた! あそこ! 左のちょっと崖上』
「ゴーストが三匹か……俺たちの必殺技をお見舞いする時が来たようだな」
この必殺技の最大の弱点は射程が5mと短いことだが、
その恩恵は無視できないほどすごいのだ。
相手がくるのすら待ってられない俺は、自分から進んで迎え撃つことに。
そして三匹を射程に入れると……
「行くぞ! チェルノぉ!」
俺は大きく振りかぶった腕を……勢いよく薙ぎはらった。
「『エナジードレイン!』」
俺たちがそう叫ぶと、その声に応えるように漆黒の腕が四本現れて、
三匹のゴーストの魔力を片っ端から喰らい付くす。
生命維持の全てを魔力で補うゴーストはそれだけで飛散していった。
どうも光が二個ある俺は、影も二個あるらしい。
そしてチェルノと同時に撃つもんだから、腕が四本出てくるのだ。
まあ、一撃で死んでくれないと困るけど。
雑魚専用だな。
『これってさ、魔力が減らなくなるねえ』
「だなあ。というか魔力が減る魔法持ってないんだけどな」
俺が使うLv4までの魔法は、消費効率がいい物ばっかりだ。
まあ無理して使う必要もないっしょ。
『乱れ撃ちとか出来ないかなあ……魔石とかに貯めて撃つとか……ブツブツ』
本当こいつ戦闘狂だよなー。
でも……低レベルの魔法を連射する魔法使いか……
なにそれカッコ良い!
だがそうなってくると、本体である俺の知力の底上げが必要になってくるな……ブツブツ。
俺とチェルノは第四の戦術「連射魔術師」という新たな楽しみを見つけ、
二人で構想を出し合いながら渓谷の中を進んでいた。
「もう一本、杖を持つとかは?」
『それだと楽しくないよ。クラウスの周りを浮遊する精霊魔法とかないのかな』
精霊魔法か……確かに低レベルなら俺も扱えるかもしれんな。
なんせ低レベルマスターだからな!
みんなに馬鹿にされるけど俺は、
雑草のような今の自分がちょっと好きになってきた。
程なく歩いていると聞こえてくる音があった。
——ゴーン……ゴーン……
そんな地響きのような共鳴音と共に、足元からはビリビリという感じの揺れを感じた。
敵か? しかも大型っぽいな……
『前からみたいだね! 行ってみようよ|』
「わかった」
俺はチェルノにそう答えると、音がする方へ駆け出す。
もちろんリュックを六つ持ったままだ。
なんで走れるかって?
初敵のゴーストにバリスタで応戦するため、魔法で腕力上昇したら荷物が軽くなったのだ。
重量制限は体力しか関係ないと、俺が勝手に勘違いしてたらしい……
普通気づくよな……俺やっぱバカかも。
話がなぜか長くなってぶった切りに……




