家族小景「四つ葉のクローバー」
「ショウ、あったー?」
「なーい!」
ショウはお母さんに返事をした。
外の風が心地よい、ある5月の日。
お母さんとショウは、田んぼの横のあぜ道に、四つ葉のクローバーを探しに来ていた。
「どこにあるかしらね」
お母さんが真剣なまなざしで地面に生えたクローバーをかき分けている。
探しても探しても、あるのは三つ葉だけだった。
ショウは探すのをやめて、あたりをのんびりと眺めた。
チュンチュンとすずめが飛んでいく。
小さな蝶々(ちょうちょ)がひらひらとショウの目の前で舞う。
田んぼには植えられたばかりの稲の苗が、ちょこんちょこんと泥の中に浮いている。
「ちょっとショウ! まじめに探しなさい」
「ふわぁーい」
気のない返事をして、ショウはあぜ道に広がるクローバーを見た。
すると、一点、そこだけ何か違うことに、ショウは気が付いた。
ひっそりと葉を広げた四つ葉のクローバーだった。
気合を入れて探しているお母さんには見つからず、のんびり遊んでいたショウには見つかるなんて、神さまもなかなかのいたずら者だ。
「お母さーん、あったよ」
ショウは四つ葉のクローバーを指さした。
「本当!? よく見つけたわねぇ。偉い偉い」
お母さんがとびきりの笑顔を浮かべ、そっと茎を折った。
「しおりにして、宝物にしようね」
「うん!」
お母さんとショウは手をつないで、家へと帰っていった。