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王子を不幸にしかしない婚約破棄

王子が不幸になる婚約破棄~さよなら、王子様 編~

『王子が不幸になる婚約破棄~ ○×編~』と似たようなタイトルがありますが、それぞれが別の話になっています。


続きはありません。

こんちはー。

『身分差を飛・び・越・え・て♪』という頭の悪そうなタイトルの少女マンガの中に転生したリィーセット・カルバラでっす。

原作では、モブ扱いよりもひどい全く出てこないキャラ。


現在は、少女マンガの最終話です。

基本、少女マンガ本編というのは主人公ヒロインが体験する出来事を面白おかしく感動的にえがいたもの。

ライバルや悪役の周りの背景なんてマンガでえがかれません。

作者様の好意で、番外編なんてない限り。

あるいは、設定資料集とか。


そんなことは正直どうでもよくって、さて私の役職はというと学生兼ドイルズ公爵家諜報部隊隊員です。

この世界では、ある程度権力のある家は家独自の『諜報部隊』を持っています。

他家に追い落とされないよう、独自に情報を集めるために。

国の権力者たちが集まるところは、魑魅魍魎たちが跋扈する場所でもありますからね。


原作マンガの内容を簡単に言うと、自分より身分の高い公爵令嬢の婚約者を誘惑してモノにし、公爵令嬢その人を蹴落とし、必要以上の罰を与える。というものです。

悪意ある表現と言われそうですが、自分が公爵令嬢側になっているので仕方ないです。


そろそろ最終話のクライマックスに突入するようです。

よかった、間に合って。

「レニエ・ドイルズ公爵令嬢、貴様のマツコ・ネイチャードへの数々のイジメは許しがたい!よって、貴様との婚約を破棄する!」

そう宣言するのは、ニジェイル・ローヤン王子。

この少女マンガにおけるヒーローの役割をしておられる方です。

王子の隣にいる美少女マツコ・ネイチャード様はヒロイン様です。

「そして、俺に本当の愛を教えてくれたマツコ・ネイチャードと婚約をする!彼女こそ、未来の国母に相応しい。マツコ・ネイチャード、俺との婚約を受けて欲しい」

「分かりました。ニジェイル・ローヤン王子様」

二人だけが感動的な雰囲気を醸し出している中、空気をぶち壊す私。

「お待ちください。ローヤン王子様。レニエ様は、マツコ・ネイチャード様への嫌がらせはおこなっていません」

「ウソよ!私は家の権力を盾に使って、その女に嫌がらせをするよう命じましたのよ!何をやったのよ、モブのくせに」

レニエ様、それは転生ヒロインや電波少女の台詞です。

「通りで、悪役令嬢の私に対するイジメや嫌がらせがなかったはずね!おかげで、自作自演しないといけなかったじゃない!なにを考えてるのよ、モブのくせに!」

ちょっと待ってよ、ヒロイン様。

ヒロイン様こそ、なんで自爆してるの!?

ヒロインが自爆して空気が変になりましたが、私はそれを無視して、

「マツコ・ネイチャード様に対してしようとした嫌がらせは事前に私が、すべて排除しておきました。これが、その報告書です」

王子に事の次第を明確に明記した報告書を渡しました。


王子様は、私の書いた報告書を読み終えると

「これは、国家直属諜報部にのみ許された『専用の報告書用紙』ではないか!?お前、まさか...」

「はい、そうでございます。私は陛下の命を受け、レニエ様が学園に入学してからは、ドイルズ公爵家諜報部隊として働いておりました。ローヤン王子様とレニエ様の婚約は、政略上必要なもの。もしも、ローヤン王子様がどこぞの女に誑かされたり、もしも、レニエ様がその女に残念な嫌がらせをする可能性を考慮して、陛下とドイルズ公爵様がお決めめになりました」

「ちょっと待て!レニエ嬢の嫌がらせが残念だと!」

「はい、とても。報告書をお読みになれば分かるかと...」

王子様が、報告書の該当箇所を読んで微妙な顔をされました。

「カルバラ、これは本当か?」

「大変残念ながら」

「通りで、なかったことにしたかったわけだな」

「ちょっと、見せなさいよ!」

ヒロイン様は、王子様から報告書をひったくって読みました。

「ふざけているの、悪役令嬢?これ、本当に残念すぎるわよ!もうちょっと、ちゃんとしたものを考えなさいよ」

「ちゃんと、考えましたわよ!」

「これじゃあ、前世の同性のイジメの方がもっとえげつないわよ」

確かにそうですね。

前世のイジメは、異性より同性同士の方がえげつなさや陰湿さがあったのですよ。

いや―、本当にヒドイものでした。

イジメをした側は、すぐにイジメをしたことをなかったことにして接してきましたからね。


なにやら、王子様とヒロイン様と悪役令嬢(レニエ様)は、低レベルな言い争いをし始めました。

ヒロイン様とレニエ様の今までした所業の自爆合戦に、王子様は顔を引き攣らせています。

そして、ヒロイン様はレニエ様がしようとした嫌がらせとイジメの数々にダメだししていきます。

より悪質を極める嫌がらせとイジメの数々に、レニエ様は「そんな酷いことできませんわ」と涙ながらに訴えます。

それに対して、説教をするヒロイン様。

この奇妙ともいえる光景に野次馬たちが、ビミョーな顔つきになっていきます。

王子様は、空気になり果てています。

なんか、何かを口に出すのを躊躇われる雰囲気です。

ですが、私が話を進めないと話が進まないと言う野次馬たちの視線の圧力に負けて、私は次の展開になるように話しだしました。

身分的にも、私が最適なのは分かりますが。

「ローヤン王子様、マツコ様、レニエ様、よろしいですか?王様より、『ニジェイル・ローヤン王子様が、レニエ・ドイルズ公爵令嬢に対して婚約破棄』した場合のみ、渡すように命令された書状をお預かりしているのですが」

私はいつもより大きな声を出して、彼ら三人にいました。

彼ら三人は、急ぐようにして私から王様が書いた書状を受け取りました。


そして、読み終えた三人は

「なんだと!?俺が、『女装』して隣国に嫁ぐだと!?俺は、男だぞ!」

「隣国の王様は、新しいタイプの美女を後宮に迎えたいようです。ですので、王妃様が提案しました。うちの息子を『女性』に仕立てて、隣国の王様に嫁げばよいのではないかと」

「母上が、提案しただと――――!?」

「隣国の王様は、この提案を大変お喜びになられました」

そう、これは王子様の母上様である王妃様がお決めになったことです。

それは、私が王様と王妃様とドイルズ公爵に城に呼ばれて王子様とレニエ様の学園生活の様子を報告した時のこと。

王妃様はものすごく機嫌の悪い笑顔で、

「家の馬鹿息子は何をしているのかしら?王族としての義務を残念ながら、理解してないわね。庶民の女に誑かされ、自分は色恋に走り、と何を考えてるのか分からないわ?......そうだわ、馬鹿息子の始末を隣国の王様に頼みましょう?いいわね、あなた」

王妃様は、王様をまっすぐに見据えて威圧感いっぱいにいました。

人は、これを脅しと言う。

王様は、顔色を悪く冷や汗をかきながら

「わかった。そなたの言うようにしよう」

「あの馬鹿息子、最近は調子に乗りすぎてイラッとしてたのよね。それに、隣国の王様は性欲絶倫な女好き。あの馬鹿息子に女装させて嫁がせたら、私に貸を作ることになるわね!」

ちなみに、隣国の王様は王妃様と心友です。

親友ではなく、心の友と書いて『心友』です。

いろんな意味で、通じるところがあったらしい。

王様と周りの偉い方たちは、そのことに口を噤んでいるようです。

聞いた話によると、そのことを王様やその他の偉い人たちに聞いた人は翌日、城からいなくなったそうです。


ヒロイン様はというと、

「えっ!?私は、パラダイム・ドットレイル伯爵子息と婚約ですって」

パラダイム・ドットレイル。

少女マンガの中では、王子を差し置いて人気一位を取っていた魅力溢れる男。

女よりも、男にモテる設定だったような。

でも、実際は女性読者のハートを鷲掴み。

書状の内容をしっかり読み終えたヒロイン様は

「やった!私、ニジェイル様よりパラダイム様の方が好きなのよね!」

そして、王子様はその言葉を聞いてショックを受け膝をついた。


レニエ様は、

「ゴッドヘイル・ローヤン第二王子様との婚約ですって!?なんでー、めんどくさい王妃生活から逃れようとしてたのに――――!」

「えっ!?それで私に何かをしようとしていたの?」

ヒロイン様、マジごめん。

あれは、嫌がらせとかイジメにならないお子様レベルの何かでしたもんね。

言い方に困って何かと言わせて、マジごめん。

「当り前ですわ。どうして、私がそんながんじがらめの生活を望むと思ってますの。私は、自由気ままで我儘な貴族令嬢生活をしたいだけですわ」

「ニジェイル様を好きで、私に嫉妬じゃなかったの?」

「そうですわ。なんで、私が人を見下す偉そうな男に嫁がなければなりませんの?お互いに支え合って、国を導くのでないと王妃という仕事をこなせませんわ」

自分自身を元婚約者に否定され、止めを刺され立ち上がれなくなった王子様。



その後、

王子様は、女装姿で隣国に嫁がされました。

このために、隣国では相手が女装姿でのみ同性婚が可能に法律を改正。

ちなみに、王子様の花嫁姿は大変美しかったです。

眼福でした。

ヒロイン様は伯爵妻としてしっかりこなし、ラブラブな新婚生活を送ってます。(ヒロイン様談)

レニエ様はというと、文句を言うこともなくしっかり王妃の仕事を抜かりなくこなしています。

・本編終了後、ヒロインと主人公は友人になりました。

・レニエは、転生者ではありません。

 ヒロインが自分の気に入らない生徒に対して、「モブのくせに」というのを聞いて意味の分からないまま真似をしました。




読んでくださり、ありがとうございました。

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