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赤ずきんは狼に襲われ……………る?

掲載日:2015/08/07

「赤ずきん、森の向こうのおばあさんの家までお使いにいってきてちょうだい。」


寄り道をしない、という言いつけを守らなかった童話の赤ずきんは狼に食われて…死ぬ。


ずっと、不思議だった。

赤ずきんはなぜ花なんかを摘むためだけに寄り道をしたのだろう。


ーーーおばあさんのため。

そう、大人には言われたけど、ずっと理解できなかった。


だから私は……………寄り道をせずに真っ直ぐおばあさんの家に向かう。


木々の隙間から洩れてくる光を受けながら、歩き続ける。

それはもう、周りから見れば競歩でもしているのかと思うほどに。


「赤ずきん、あっちにお花畑…………」

話しかけてくる小鳥を無視し。


「ねぇ、一緒にお花摘み………………」

誘ってくるうさぎたちを無視し。


私は、歩き続ける。


ざざざざざざ…………。

狼が慌てて草木を掻き分けながら走っている。

赤ずきんが花畑にいかなかったことで待ち伏せてた狼の苦労も水の泡となったからだ。


だが、それに負ける赤ずきんではない。

スピードを上げ、狼と並走する。


………………………………二人(一人と1匹?)は無言で走り続ける。


まだ、二人はしらない………森を抜けるまで数日かかることに。


赤ずきんの母親?

もちろん知っていたが、言ったら絶対に赤ずきんは逃げ出す、と確信していたので、あえて無言で送り出した。むしろ、わざと時間がかかるルートを教えたのである。


……………………ある目的のために。


実の娘に対する罪悪感がなかったわけではない。

なので、赤ずきんには籠ではなく大量の食料と水などが入ったリュックを渡したのである。



はぁ、はぁ、はぁ、…………。

いくら超人赤ずきんと、超獣?狼も息が切れ、今にも止まりそうになっている。なにしろ、今はもう、日も沈んでしまいそうなほど。とても長い時間走っていたからである。




「……………………………赤ずきん、一旦休憩にしよう。」

さすがに疲れ、立ち止まった狼が赤ずきんに向かって言う。


「なによ、狼の癖に体力ないのね。」

憎まれ口を叩きながらも赤ずきんも止まる。



食われるかもしれない、という恐怖は無かった。

逆に狼にも喰おう、という気持ちはなかった。


数時間、共に走り続けた二人にはなにか………友情にも似た感情が沸き上がってきたからである。


ざっ、ざっ、と狼が草をむしりとり、そこに火をつける。

そして出来たスペースに赤ずきんが、リュックに入っていたシートを引く。


それから、リュックからリンゴとおにぎりを出す。

リンゴを狼の方に投げてからおにぎりを食べ始める。



「あ、梅干しだ。」

大好きな梅干し入りのおにぎりだとわかり、思わず声を上げ、顔をほころばせる。


「…………良かったな」

狼がそれに答える。


「ん、おかわりいる?」


狼がリンゴを食べ終わった狼を見て言う。


「肉が食べたい」


がさごそ、とリュックを探りシーチキン入りのおにぎりを狼に向かってなげる。


「……………………」

なにか言いたげな狼だが結局無言で食べ始める。


「「ご馳走さまでした。」」

二人揃って挨拶をし、ごみを片付ける。




赤ずきんはリュックのなかに寝袋がないことを確認して、しょうがなく適当な場所にねっころがる。



狼もそこら辺で寝ようと身を横たえたあと、迷いながら、赤ずきんに話しかける。



「……………………もうちょっと近くで寝ないか?」


「一緒に寝たいの?」

笑いと共にからかうような声を出す。


「いや、ちがくて、あ、ちがくないけど…………

ほら、夜は冷えるから。」

慌てながら狼も返事をする。



そんな狼の様子を見て、赤くなりそうな頬を押さえながら無言で近づく。


そして、狼にぽふっと身を委ねると目を閉じ、眠りにつく。

ぎゅっと抱きしめられて、全身に熱を孕んでいくのを感じながら。






さて、ここに1匹の狼の子供がいる。

狩りもできず、果物や人間の食べ物だけを食べていた為親に捨てられた可哀想な狼である。


そして、今は冬。果物もとれず。

わざわざ自分に餌をくれに森にくる人間もおらず。

幾日も食べられない日が続き、もう死んでしまうほどにまるで、仔犬のように痩せこけている。


そんな狼を見つけたのが、可愛い人間の子供。

赤い頭巾をかぶりっている。


子供は、自分のことを苛めるだけなので、自分にとっては危険な存在。だから、何時もはそれを見たらすぐに逃げるのだけど…………。


もう、どうでもいいと思った。

どうせ逃げても餌はないし、死ぬだけだと。


だけど、その女の子はちがった。

被っていた頭巾を外し、身体を優しく包み。

そっと、抱き締めてどこかへ向かって走っていく。


暖かい、と思った。

初めて、やさしさに包まれた気がした。


そして、その女の子は彼女の家に自分を連れていって、春がくるまでたくさんの果物を与えてくれた。彼女の母親もそれを認め、可愛がってくれた。


ただ、彼女の父親は知っていた。

僕が、狼だということに。


彼は冬が終わったとたんに僕………狼を家から追い出した。 春まで待ってくれたから優しい人だと知っている。

だから、攻めもしないし、逆にありがたく思っている。


でも、赤ずきんにとってはちがった。

冬の間だけ、という短い間だったけれど彼女は僕のことを本当に大切にしてくれた。


だから、僕が森に帰ったあと余りの哀しみに僕との思い出を全部忘れてしまった。これは最近になってハンター………彼女の母親に聞いた。


そして、言ったんだ。


「貴方といたときが、赤ずきんが一番楽しそうだったの。

だから、あの子ともう一度会ってくれる?」


「貴方と、赤ずきんが望むなら結婚もしていいわ。」


見抜かれていた。

彼女のことが好きだということ。


あれから、何度も会いに行こうとして、見るだけに終わったのも多分、知ってる。



だから、せいぜい狼らしく赤ずきんを襲うことにしよう。


優しく包むようにゆっくり、ゆっくり。


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